2012.2.29 プレスリリース

厚生労働省案ではなぜダメなのか

2012年2月29日

障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団

 

本日午前の民主党政策調査会厚生労働部門会議(座長長妻昭)において第180回国会に3月に上程する厚労省の障害者自立支援法一部改正法案が概ね了承されたとのことである。

私たち障害者自立支援法違憲訴訟原告団弁護団は国が約束した基本合意文書・司法での和解条項にある「国は平成25年8月までに障害者自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を実施する」に反するこの法案提出に抗議し、その問題点を取り急ぎ指摘します。

 

●  「廃止」は出来ます

  厚労省は法の廃止が出来ない理由として

  「新旧の法律の継続性を考慮する場合は廃止が出来ない」と言います。

しかし、そもそも障害者権利条約の批准をするための国内法制定のための改革会議であり、現行の障害者自立支援法の骨組を「障害者が権利の主体となる法律」に根本的に組み替えることを目的とした会議であり、新たな法体系を構築するための提言であり、「新旧の継続性が必要」ということは、「そもそも厚労省には新しい法律を作る意欲がない」と同義語であり、「廃止したくないから廃止しない」と自認しているに過ぎません。
 

 平成15年の旧支援費制度の条項は、身体障害者福祉法第17条の4~32、知的障害者福祉法第15条の5~32、児童福祉法第21条の10~25などから、約77条項が一挙に廃止されて、平成18年に障害者自立支援法が同時に施行されました。

 障害者自立支援法は附則に23の条項を設けて、経過措置と「みなし規定」を設けて、従来のサービスが維持されて障害当事者に不利益の生じないように技術的に配慮したはずです。前回できたことがどうして今回不可能と言われるのか理解できません。
 

 この国の官僚のみなさんがその気になれば条文作りなど訳なく出来ます。

 国は基本合意通りに廃止すべきです。

 

●  障害者自立支援法が無傷で維持されています。

 障害者自立支援法には「115」の条文があります。

 今回の法案で修正されるのはそのうちの

 1、2、4、36、42、50、51、68、77、78、87、88、89、96、105の「15条項」に過ぎません。

 しかもこのうち、2、50、68、78、96、105は他の条文の引用などの関係の形式修正であり、内容上の変更ではなく、わずかにせよ内容上の修正があるのは「9」条項に過ぎず、障害者自立支援法の105条項のうち96条項は完全に現状維持されて手付かずです。42、51も11文字挿入しただけの微修正ですので(内容はともかく)かろうじて修正といえるのは7条項のみ。7/105=6%です。

 いみじくも自ら当初「一部改正法案」と称せざるを得なかったはずです。

 半数以上の大多数の条文が変更されてはじめて「全部改正」と称することが出来ると言われていますが、今回はそれにさえ該たらず、6%の条項に触れただけの微修正。

 これで「事実上の廃止」のわけはなく、「現状肯定法案」です。

 

●  総則規定に注目

 障害者権利条約批准に向けて、障害者が権利の主体となる法構造に変革することが改革の目的です。

 そのため骨格提言12頁では総則規定として、次の基本規定を提言しています。

地域で自立した生活を営む基本的権利の保障規定

. 障害ゆえに命の危険にさらされない権利を有し、のための支援を受ける権利が保障される旨の規定。

. 障害者は、必要とする支援を受けながら、意思(自己)決定を行う権利が保障される旨の規定。

. 障害者は、自らの意思に基づきどこで誰と住むかを決める権利、どのように暮らしていくかを決める権利、特定の様式での生活を強制されない権利を有し、そのための支援を受ける権利が保障される旨の規定。

. 障害者は、自ら選択する言語(手話等の非音声言語を含む)及び自ら選択するコミュニケーション手段を使用して、市民として平等に生活を営む権利を有し、そのための情報・コミュニケーション支援を受ける権利が保障される旨の規定。

. 障害者は、自らの意思で移動する権利を有し、そのための外出介助、ガイドヘルパー等の支援を受ける権利が保障される旨の規定。

. 以上の支援を受ける権利は、障害者の個別の事情に最も相応しい内容でなければならない旨の規定。

. 国及び地方公共団体は、これらの施策実施の義務を負う旨の規定。

しかし、政府法案はこれを全て却下、不採用としました。

 仮に「障害者自立支援法をベースに改革の理念を実質的に盛り込む」ならば、現行法でポイントとなるのは

1~5条   総則

 6~14条  自立支援給付の通則

 19、20、21、22の支給決定、障害程度区分認定です。

ここに「権利の主体へ」の改革があるか否かが評価の目安です。

 そして上記したとおりこの法規定の肝となる18の条項は、1,2,4の3条項を除き5条~22条部分は完全にスルーされ、全く手が付けられておらず、現状維持です。当事者主体の法への変革になっていないことがこの部分で証明されています。

 骨格提言には60項目167事項の提言があります、この法案はほとんどそれを無視しています。

 私たち抜きで私たちのことを決めないでとした障害者権利条約、障害者制度改革の理念を尊重したと言えるでしょうか!?

この法案では障害者権利条約は批准出来ません。
 

● 利用者負担問題を解決しないことは本質的な問題なのです

あたかも201012月成立の「つなぎ法」により、応益負担から応能負担に変更されて問題が解決済みであるかのごとき政府が主張しています。

 しかし、まさにそのつなぎ法の29条により利用者負担額は「家計の負担能力」により決まるものとされました。その構造は今回の法案では全く変更されません。家族依存、家族介護を大前提としているのが現行法なのです。骨格提言127行目以下で「障害者支援を自己責任・家族責任としてこれまで一貫して採用されてきた政策の基本的スタンスを社会的・公的な責任に切り替える」とする今回の改革の基礎理念が全く反映されていません。

 現に現行法により配偶者等の家族の所得を理由に多額の利用者負担が強要されて自立が阻害されている障害者は少なくありません。

 その意味でも今回の法案は基本合意に反しています。
 

 

● 全国の原告が一斉に記者会見で意見をみなさまに話します

3月5日(月)午後3時を中心に(地域により設定時間帯は変わります)全国14か所の地裁のある地域で原告団が記者会見を開きます。

司法上の和解での決着を被告国が覆そうとすることの問題を訴え、改めて東京では次回は東京地裁司法クラブで会見します。

障害者自立支援法違憲訴訟全国弁護団事務局

弁護士藤岡毅TEL03(5297)6101

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東京弁護団,
2012/02/29 4:44
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