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全国弁護団事務局通信


全国弁護団事務局 通信 第14号 2011年12月21日

◇出版記念シンポジウム終了のお知らせ


先日ご案内した障害者自立支援法違憲訴訟活動記録出版記念シンポジウムが大盛況のうちに終了しました。
 会場には110名を越える方にお集まりいただき,私たちも大いに勇気づけられました。
 お忙しいところ足を運んでいただきました皆様に心から感謝いたします。
 (当日のプログラムはこちらです。)

 藤岡毅弁護士による基調報告のレジュメを公開いたしますので,お越しになれなかった方も是非ご覧ください。




障害者自立支援法違憲訴訟活動記録出版のお知らせ

◇出版のお知らせ

 2008年10月31日,全国8地裁への一斉提訴で始まった障害者自立支援法違憲訴訟の活動記録が書籍になりました。
 「利用者負担は障害者福祉の本質に反するものであり,憲法違反である」
との理念の下,歴史に例を見ない憲法訴訟に挑んだ原告団と弁護団の歩みを是非ともご覧ください。

「障害者自立支援法違憲訴訟 立ち上がった当事者たち」
 障害者自立支援法違憲訴訟弁護団[編]生活書院
 定価:3150円(税込)A5判並製 384頁

購入を希望される方は,こちらの注文書をご利用ください。

◇出版記念シンポジウムのご案内

 弁護団では,活動記録書籍の出版を記念してシンポジウムを開催します。
 これまでの歩みだけでなく,現在も続く活動の最先端に触れていただく機会ですので,皆様ふるってご参加ください。

□日時 :2011年12月8日(木)15時~19時
場所 :戸山サンライズ2階 大研修室
     東京都新宿区戸山1-22-1
     TEL:03-3204-3611 
     FAX:03-3232-3621
お問い合わせ先:
   [主催] 障害者自立支援法違憲訴訟弁護団
     TEL:03-5297-6101
   [後援] 障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会
    事務局(日本障害者協議会内)
     TEL:03-5287-2346
   詳細はこちらのパンフレットをご覧ください。
   (クリックでpdfファイルが開きます)


     

全国弁護団事務局 通信 第13号 2010年3月14日

 

…激動の8ヶ月をまとめてご報告…

 

 久々の通信です。

 実に昨年7月14日の夏の奈良地裁の報告以来、約8ヶ月間更新する余裕がなく、すみませんでした。

 その間、情勢は激変しました。

 以下、振り返ってご報告致します。

 

2009年

[7月30日] 

東京弁護団員と東京地裁裁判官との事前進行協議の実施。

 被告側が不参加なので、訴訟記録に掲載される公式協議ではなかったかもしれませんが、これだけの訴訟ですので、事前に弁護団と裁判官が打ち合わせをするのは当然です。

 ここで、聴覚障害者の傍聴人のための手話通訳のあり方が議論になりました。

 私が弁護団として、傍聴人のための手話通訳者は立って行なう必要があるのでその確認をしました。

 というのは、障害者自立支援法訴訟のさいたま地裁の裁判長は第1回期日において傍聴席で手話通訳者が立つことを禁止しており、東京弁護団として東京地裁に対して平成21年2月27日付文書において、次のとおりの申し入れをしており(聴覚障害者関係の箇所を抜粋)、そのことを再度口頭にて確認したものでした。

 

第1回期日の進行等に関する原告弁護団意見

四 障害を持つ市民の傍聴する権利への配慮の点

 裁判、とりわけ国及び地方公共団体を被告とする裁判の公開が保障されること、すなわち市民の裁判傍聴の権利が保障されることが重要であることは当然です(憲法第82条)。

 そして、障害者基本法により障害者に対する最大限の配慮が求められています。

 身体障害者補助犬法第7条により国が管理する施設において障害者が「盲導犬、介助犬、聴導犬」等の補助犬を同伴することを拒んではならないとされ、法廷内に補助犬を同伴できることは言うまでもありません。

 

1 車いす等のスペース確保の点

 102号法廷は固定座席が98席と聞いています。

 そのうち、3席×4列の12席分の固定椅子をはずしてフリースペースにして車いす等を利用する傍聴人のためのスペースにする旨お聞きしております。

 傍聴券配布の場合には車いす等の方への配慮をお願いします。

 そうすると86座席。

 司法記者席も12席くらいでしょうか。

 残る座席は 74席くらいでしょうか。

 

2 聴覚障害者への手話通訳保障への配慮

 本訴訟の原告に手話通訳を必要とする聴覚障害者はおりません。

 もし、それがいた場合には、裁判所の責任・負担において手話通訳の公的保障が求められるものです。

 今回は傍聴人として想定されるだけなので、現時点の日本の司法の現状からは傍聴人の手話通訳を裁判所が保障することはかなわないだろうと認識しておりますが、私たちとしては、憲法に基づく裁判の公開保障は、聴覚に障害を持つ傍聴人の手話通訳または要約筆記による情報確保の権利保障まで含むべきだと考えていることを念のため申し述べます。

 以上は、原理的な考察です。

 現実的には次のことを申し入れます。

 

① 手話通訳者等には傍聴券は不用として扱われるべきです

 聴覚に障害を持つ傍聴人のための裁判傍聴における情報保障をするための手話通訳者は傍聴券を必要とする扱いはしてはならないと考えます。

 まず、手話通訳者が傍聴券の抽選に外れた場合聴覚障害者が通訳を受けられないという帰結が問題であることは言うまでもありません。

 では手話通訳者には傍聴券を優先的に割り当てるという対応は正しいでしょうか。

 それも誤りと考えます。

 例えば要約筆記の場合、4~8名ほどのチームで職務に当たります。

 傍聴席が10名ほどの法廷で要約筆記方式で情報保障をする場合、それらの要員を傍聴人としてカウントすれば聴覚障害を持つ傍聴人と情報保障のための要約筆記グループだけで傍聴席は埋まってしまうことになります。

 この場合、手話通訳者、要約筆記者は、情報保障のための補助具、支援器具として位置付けて考えるべきであって、「傍聴人」としてカウントすることは間違いです。

 視覚障害と聴覚障害を併せ持つもうろう者の場合、情報保障を、触手話通訳者、指点字通訳者がする場合などありますが、いずれも同じ理屈になることをご理解下さい。

 

② 傍聴人に聴覚障害者がいる場合、裁判の公開の意味を実効性あるものとして保障するため、聴覚障害を持つ傍聴人に進行している裁判の意味が理解できるよう最大限の配慮をお願いしたい。

 そのためには、手話通訳者の立ち位置が重要になります。

 つまり、法廷での裁判官、代理人、原告、被告などのやりとりの姿と手話通訳者の 姿が同じ視界に入っていないと、法廷での出来事を追って理解していくことが困難となります。

 そのため、傍聴席スペースの真ん中の柵の内側あたりの位置が手話通訳の立つ位置としてベターな場合が多いようです。

 

 場合によっては柵の中に位置する場合が望ましい場合があり、現に大阪地裁では今回の障害者自立支援法違憲訴訟の第1回口頭弁論の際に手話通訳者は法廷の柵の内側に立って通訳しています。

 パワーポイントの画像の位置が柵の傍聴席側でなければならない訳でないことと同様、手話通訳の位置は聴覚障害者の情報保障を確保する観点から必要な位置が確保されるべきなのです。

 中には手話通訳者が「立つ」ことを認めないで座るように指揮する裁判官がいるとのうわさを聞きますが、論外です。

 聴覚障害者の権利保障に無理解というほかありません。

 

五 常時介護が必要な障害者の介護人の付き添いを認めて下さい。

 車いす、寝台車などを利用する障害者の場合が主に想定されますが、時々体の位置を動かしたり、口を拭いたりなど、常時介護が必要な重度障害者も裁判傍聴をします。

 全ての障害者の介護人をとまでは言いませんが、介護人が同じ空間で本人を観ていないと心身に影響がある可能性がある障害者の場合、介護人が法廷内で待機することを認めて下さい。

 もちろん、傍聴券の抽選対象ではない扱いをお願いします。

 パイプ椅子等で障害者の近くで付き添い体勢にいられれば、裁判所としても安心ではないでしょうか。

 

 

 

 そして、7月30日の進行協議において、裁判長が、聴覚障害者が一人の場合は、座っても手話通訳は可能で、立つ必要がないのではないかとの疑問を呈しました。

 私は即座に、身振り手振りを交えて、聴覚障害者が視る法廷内の様子と通訳人の手話の様子ができるだけ同じ視界の枠内に納まっている必要があり、顔を左右に大きく振りながらでは同時通訳の用をなさないので、一人か複数かに関わらず立つ必要があるのですということを熱弁しました。

 裁判長からは、特段の異議はありませんでしたので、弁護団としては当方の主張が受け容れられたと理解していました。


[8月7日~8日] 

全国弁護団合宿

 京都で全国から弁護団が結集して合宿を行ないました。

 60名を超える弁護団員が参加しました。

 討議、学習された論点は多岐にわたりました。

 憲法上の論点に関する主張内容の議論、権利条約、ILO条約、海外比較、立法過程上の問題点等々。

 2日目の最後の議題として、「政権交代と訴訟対応」が議論されましたが、結論めいたものはありませんでした。

 

[8月24日]

 第21回 全体会議

 めざす会と弁護団が訴訟運動の方針を確認する合同会議実施。

 議題の第8項目として「政権交代と訴訟」が議論されましたが、やはり、現実の選挙の結果を見る前に確定的な議論はありませんでした。粛々と訴訟は進めるというのがこの時点での関係者の認識だったと思います。

 

[8月28日]

めざす東京の会 結成

 戸山サンライズで、「障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす東京の会」が結成されました。

 220名を超える市民が集まりました。

 集会での私の報告は次のものです。

http://www.normanet.ne.jp/~ictjd/suit/data/20090828_tokyo_fujiokamemo.doc

 

[8月30日] 

総選挙

 障害者自立支援法を推進、制定した自公政権が破れ、障害者自立支援法に反対する民主党が政権を奪う、与野党逆転が実現しました。

 

[9月7日] 

東京地裁 第1回 口頭弁論期日

 被告の答弁は、従来と同じで、請求棄却を求めるものでした。

 つまり、争う姿勢に変化はありませんでした。

 総選挙は終わっても、正式に新政権が発足するのは9月16日の総理大臣、閣僚の就任なので、法務、厚労の官僚が旧政権下の政策方針に従うのは当然といえば当然のこと。

 この日の法廷で印象的なできごとは他にありました。

 上記の7月30日の裁判官との事前進行協議で確認したはずなのですが、聴覚障害の傍聴人が一人であったことから、開廷の前に裁判所書記官が傍聴席に手話通訳者に対して、立ってはならないという裁判長の訴訟指揮を伝えてきたのです。

 聴覚障害者の傍聴人も弁護団もそれには抗議し、その紛糾で10分以上、開廷が遅れました。

 結局、聴覚障害者の方がその日、「首を痛めているので、首を左右に振ることは痛くて出来ない」という訴えを聞いた裁判長が、「そのような特別な事情があるならば」という特別扱いで、この日、通訳者が立って通訳をすることを認めました。

 私はそのような、特別扱いという事情は実はあとで関係者に聞いて判ったのですが、このときは、とにかく、手話通訳者と聴覚障害者への情報の保障が当然の権利として認められるべきことを裁判長に理解いただかないことには、これから始まる障害者の権利のあり方の審理など望むべくも無いと思いました。

 

 そこで、裁判長から

「原告は訴状を陳述致しますね」と問われ、原告弁護団として、「はい、陳述します」と必ず言うべきシーンで、

「いいえ、その前に裁判長に確認したい点がございます」と切り出し

「裁判長は、聴覚障害を持つ傍聴人のための手話通訳者が立つことを認めない扱いを行なったことは間違いありませんか。仮にそうだとしたら、その理由をお聞かせ下さい。」と裁判長に対して質問しました。

 八木裁判長は、「はい、そのように指示しました。」と事実を認め、「聴覚障害の方が複数でない場合は、座って手話通訳をしても支障がないと判断しました。」「事前の弁護団との進行協議で弁護団にもご理解いただいていたはずです」旨答えました。

 事実経過にも反する裁判長の弁明には私は怒りも覚えて、経過が異なることと、裁判所の訴訟指揮は聴覚障害を持つ市民の裁判傍聴の権利に理解のない誤った不当なものである旨激しく抗議しました。

 第一回期日として応援に掛け付けてくれた竹下義樹全国弁護団長も裁判長に対して、

「手話通訳は、聴覚障がい者のコミュニケーションを図るために実施するものである。

手話通訳者のこの機能を理解しないまま実施しても、聴覚障がい者への配慮にはならない。

 障がい権利条約では、手話は言語であること、障がいに対する合理的配慮をしないことは差別であると明記している。

 少なくとも、立って手話通訳を行うことは、法廷の秩序を害するものではないはずでる。
 にもかかわらず、聴覚障がい者への配慮として機能しないような手話通訳の配置をしたまま、裁判所としては審理を進めようとするのか。」と抗議しました。

 弁護団側からの猛抗議は延々続き、この日のTBSニュースでも事件として報道されました。

 裁判後の集会で傍聴した福島智さんからは、「竹下さんと藤岡さんの通訳のことの抗議だけでこの日の裁判は終わってしまうんじゃないかと思った」と冗談が出るほど、この日の弁権団の抗議は激しいもので、そのために実質審理は30分ほど遅れました。

 障害者自立支援法訴訟の全国の法廷における手話通訳の問題については、朝日新聞も12月1日掲載され、また東京弁護団でも改めて12月に文書で申し入れをするなどした結果、少なくとも東京地裁においては、2010年1月14日に実施された裁判官と東京弁護団、被告代理人団との正式な進行協議期日において、「(聴覚障害の傍聴人が一人であっても)手話通訳者が立って通訳をすることを認めます。」と約束するに至りました。

 

 原告深山一郎さんのお母様ヨシエさんから、「ここにいる一郎は私の宝です」で始まった意見陳述は、ようやく地域で生きていく希望が出てきたときに障害者自立支援法の出現でその希望が持てなくなった母の気持ちが訴えられ、おそらく被告側代理人団さえも心揺さぶられざるを得なかったのではないでしょうか。

 

 裁判後、弁護士会会館2階の講堂クレオで行なわれた報告集会には300人の人々が結集し、大きな盛り上がりをみせました。

 

[9月16日]

 新政権発足 長妻昭厚生労働大臣就任

 

[9月18日](金)

 私が担当している障害者自立支援法の某村居住の重度障害者の重度訪問介護の支給量を巡る不服審査が東京都から棄却されたことに対する抗議の記者会見を厚生労働記者クラブで11時30分から行いました。

 私が厚労省クラブの記者に、政務官は決まったのかを聞くと、未だ決まっていないということでした。

 会見後、囲まれた記者から、障害者自立支援法訴訟の帰趨を聞かれたため、新しい厚労大臣に是非、障害者自立支援法訴訟を新しい政権、大臣としてどうするつもりなのかを突撃取材するのがあなたたちの仕事だろうと、発破をかけました。

 19日~23日が5連休でした。

 

[9月19日](土) 

長妻厚生労働大臣が厚労省記者らに対して、障害者自立支援法の廃止の方針を表明。

 

[9月20日](日) 

朝刊各紙に、19日の大臣表明が大きく報道されました。

 

[9月24日](木)

 5連休明けのこの日、障害者自立支援法訴訟の新政権下での最初の期日が広島地裁で午後1時10分、開かれました。

 歴史に残る日となりました。

 私は新政権下での最初の期日ということで注目していましたので、法廷に出頭しました。

 そこでは、国と自治体のいずれも代理する代理人団は、

 既に提出済みの9月17日付けの被告準備書面の陳述を留保すること

 三党連立政権合意において障害者自立支援法は廃止することとしているため、今後の訴訟追行のあり方を検討したいので時間的猶予を下さい

 と陳述しました。

 私は大勢のみなさんと話しあわなければならないので持ち帰り検討しますと答えました。

 国の制定した立法が憲法違反であるとする集団憲法訴訟において、訴訟の途中で、しかも全国のどこでも判決が出ていない段階で、国側が原告と争う姿勢の転換を示唆して時間が欲しいと申し入れることなど、日本の司法の歴史で初めての日であったことだけは間違いないでしょう。

 

[9月29日]

 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部藤井康弘企画課長から竹下団長に対して、

「自立支援法訴訟の解決に向けての話しあいの場を設けたい。

 近日中にお会いできるよう調整をお願いしたい。」と、政府から公式な話し合い解決の申し入れがありました。

 

[10月6日] 

 原告、弁護団、めざす会のメンバーが政府の「協議申し入れ」の趣旨の説明を受けるため、厚生労働省山井和則政務官室を訪問。

 山井政務官からは、訴訟解決のため、協議に応じていただけると有り難い、障害者自立支援法により、障がい当事者、家族、関係団体の方々に対し、多大な混乱を招きご迷惑をおかけしました等の丁寧な説明があり、訴訟団側からも、安心して暮らせるための社会に変えて欲しい旨切実な発言が相次ぎました。

 

[10月7日~21日] 

今後の方針をどうするかについて、全国から原告が東京に集まり、意見交換の場を数回もち、各地、全国で、めざす会、弁護団が真剣で丁寧な議論を繰り返しました。

 そして、訴訟解決のための話し合いには応じる、他方、それは直ちに訴訟を終結するものでなく、原告の納得いくまで訴訟は継続するという方針を確認しました。

 

[10月22日]

 正午過ぎ、原告側が厚生労働省の山井政務官を訪問し、上記方針を伝え、午後3時、方針を厚労省記者クラブにて発表。NHKテレビ等で大きく報道されました。

 

[10月30日]

 日比谷公園を中心に、「さよなら!障害者自立支援法 つくろう!私たちの新法を!」と題する大フォーラムが行なわれ、1万人が参加しました。

 全国の原告も登壇し、障害者自立支援法の廃止と今後の更なる運動の必要性を力強くアピールしました。

 長妻厚生労働大臣も登壇し、障害者自立支援法の廃止の決断を表明しました。

 画期的なことでした。

 思えば、2007年10月30日の大フォーラムでは、午後5時~6時に交渉団と厚労省との交渉が行なわれましたが、当時の企画課長は交渉団から、応益負担の根拠を問われ、

「かつては負担がゼロという時代もあったかもしれませんが、それはそうではなく、何がしかの負担をいただいた上で、きっちりとサービスを買っていただく、90%プラスアルファは公費で保障をしたうえでサービスを買っていただくように変えていく、それが考えた方だと思います。」と回答しています。

 また、交渉団から

 「障害から来る不利益を埋めることを障害者の自己責任にすることについて?」と問われたのに対して、企画課長は

 「今の制度は基本的に正しいものだと理解していますが、サービスの利用に伴ってどういう負担をいただくかは、与党の中でもご議論いただく。」と回答しています。

 2年でガラリと変わりました。

 

[11月16日~12月29日]

 訴訟団は、原告、弁護団、めざす会からなる、訴訟協議プロジェクトチーム(PT。交渉団)を結成しました。

 この間、PT会議が8回、訴訟団と政府側との交渉が5回実施されました。

 とりわけ、協議も大詰めの12月29日には、28日の官庁御用納めのあとでありながら、衆議院議員宿舎の会議室に、PT、与党議員、厚労省が集まり、実質、午後2時~9時頃まで7時間に及ぶ、それはそれは激しいやりとりが交わされました。

 そこで基本合意案が詰められました。

 

2010年

[1月7日] 

 午前に第9回目のPT会議実施。

 午後1時~5時、戸山サンライズにおいて、全国から原告が結集し、めざす会、弁護団のみんなで基本合意案に調印して訴訟を終結するか否かについて、熱心な討議をしました。

 基本合意文書の内容については、多くの原告は支持を表明するものの、応益負担の廃止を標榜する新政権が最初に獲得したそのための予算が当初目標の300億円から107億円に減じて、自立支援法医療の低所得者無償化の2010年4月からの実現が見送られるという事件が年末にあったことも大きく影響し、そのような政権は信じられないという気持ちはみんなに共通ものとしてあり、他方、信じられないからこそ、大臣に調印させ、訴訟上の和解調書において司法文書として確認して新政権を拘束することに大きな意義があるはずなどの議論が続き、「苦渋の決断」の気持ちもある中、調印、訴訟終結の決断を午後4時50分、一致して確認しました。

 そして、直ちに厚生労働省の2階大講堂に移動し、厚生労働大臣と訴訟団との間で基本合意調印式が行なわれました。

 

 基本合意の意義については、

賃金と社会保障 (発行:賃社編集室)2010年2月下旬号 1508号 連載 その5

 「特集  障害者自立支援法集団訴訟、基本合意締結!」

http://info.jiritsushien-bengodan.net/Home/zenkoku-bengo-dan-jimu-kyoku-tsuushin/media-tou-no-genkou-keisai

 に詳しく書いていますので、是非、お読み下さい。

 

[1月12日]

 障が者政策改革推進会議 第1回 開催

 内閣府で開かれた、この会議の冒頭で、内閣府特命大臣の福島瑞穂大臣と厚生労働省の山井和則政務官から、政府(厚生労働省)と訴訟団との基本合意文書が、今後の新しい法のあり方の議論にとって重要な公文書であることが強調され、構成員全員に配布されました。

 厚生労働省のホームページにも1月15日から基本合意書と要望書が掲載されています。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsushienhou/2010/01/100107-1.html

 

  このHPでは次にあります。

http://info.jiritsushien-bengodan.net/2010nen-1tsuki-7nichi--koku-to-soshou-dan-no-kihon-goui-seiritsu

 

 

[3月24日~4月21日]

 3月24日のさいたま地裁を皮切りに、4月21日の東京地裁をファイナルとして、全国14箇所の地裁で、基本合意を原告と被告が確認する内容の訴訟上の和解調書を作成して、訴訟は勝利を確認して終結します。

 しかし、2013年8月の新法制定までが、私たちの次なる大切な、闘い、運動です。

 天下の悪法障害者自立支援法を葬り去り、では、私たちがどのような、全ての障害者、市民が安心して暮らせるための法律、制度を作っていくか、これからがまた正念場です。

 今後とも大きなご支援をお願い申し上げます。

  藤岡 毅

 
 
 


全国弁護団事務局 通信 第12号 2009年7月14日


(イラスト:小山冨士夫さん)

クリックで大きな画像を表示します。それぞれ1メガバイト程度ありますので注意。


 奈良地方裁判所 第1回期日  夏の日ざしの中、古都奈良での裁判始まる

 

 本日午前10時30分、奈良地裁で第1回口頭弁論が開かれました。

 

 原告の小山冨士夫さん、奈良弁護団の団長池田直樹(大阪)、地元奈良弁護団から佐々木(育子)、北條、皐月、西村(香苗)、高橋(和宏)、山﨑、無漏田、大阪弁護団から辻川、青木、中井、滋賀弁護団から高橋(陽一)、そして全国弁護団長竹下、事務局長藤岡が原告側の席に座りました。

 

 午前10時30分 開廷

  原告弁護団 訴状陳述 

  被告代理人 答弁書陳述

 

午前10時34分~42分  竹下義樹全国弁護団長の意見陳述

この法は、施行されたあとに不合理性が判って来たのでなく、法制定当時から法の欠陥は立法府自身も判っていたという異常性があり、厚生労働省が無理矢理導入した不幸な過程にあったこと、勇気を持って立ち上がった原告と障害を持つ人の声を十分汲み取った審理を行なって欲しいと裁判長に求めました。

 

10時42分~46分  原告小山さんの意見陳述

コミュニティーワーク「こッから」で牛乳パックをもとに紙すきをして名刺用の紙を製作したり印刷したりという仕事に誇りをもっている姿が陳述で伝わりました。

応益負担が払えずに職場を辞めて行った仲間もいて、一日も早く応益負担をやめて欲しいという訴えでした。

裁判のあとで「緊張した」とおっしゃっていましたが、なかなか堂々とした陳述でした。

裁判後の集会で、小山さんの描いた絵(上記の2枚です)が描かれているクリアフォルダが販売されていたので、思わず買いました。2個で400円。

  

お問い合わせは 080-1424-9315 「障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす奈良の会」まで。

 

10時47分~55分 奈良弁護団佐々木育子団員がパワーポイントを使いながら弁護団としての意見陳述

関西の他の弁護団での意見陳述を参考にした内容ですが、特徴的な弁論は、先日の奈良地裁の下市(しもいち)中学入学拒否事件での仮の入学義務付け決定を取り上げながら、支援を受けることを利益として利用料を徴収することのおかしさを論じたところです。

もちろん奈良の人には周知のことで関西では新聞で大きく取り上げられて注目されている事件ですが、関東ではマスコミの扱いもそれほど大きくはないので知らない人もいると思います。

これは、車いすを利用する12歳の少女が地元の中学への入学を希望したことに対して、下市町の教育委員会から「この中学は階段が多い、養護学校が妥当」などとして入学を拒否された事件で、6月26日奈良地裁は、入学拒否は著しく妥当性を欠き、違法であるとして、町に対して、少女の入学を仮に義務付ける命令を下したものです。

たとえば移動に介助員の支援を受ける障がいを持つ生徒だけが介助員を利用する「利益」に対して「利用料」が徴収されるとしたらどうであろうかという問いかけは、奈良地方裁判所の裁判官にもよくわかる話しだったのではないでしょうか。

 

話は飛ぶようですが、上記の仮の入学義務付けに対して高等裁判所に対して即時抗告をして徹底抗戦する下市町の姿勢には首を傾げます。

同事件弁護団のよびかけもあり、私は個人の意見として、下市町、町議会等に対して次の文書を送りつけました。 

 

奈良地裁決定に対する即時抗告は即刻取り下げるべきです。

  平成21年7月3日 弁護士 藤 岡 毅

 私達は、平成21年6月26日、奈良地裁が、Aさんを下市町立下市中学校へ就学させる仮の義務付けをした奈良地裁決定に下市町が即時抗告したことに驚きました。全国からの下市町への評判を著しく損なう愚行と思います。

 即時抗告をただちに取り下げることが賢明な判断と思われます。

 Aさんを一日も早く、正式に下市中学校の生徒と認め、同中学校に通学できるようにして下さい。

 Aさんは、裁判所の決定が出て、やっと希望していた下市中学校に通えるようになりました。今は、待ちこがれた中学校生活が始まる喜びと、早く中学校での勉強に慣れることができるだろうか、友達はできるだろうかといった不安な気持ちが入り混じった状態にあります。これ以上、Aさんとその家族に不安を与えるようなことは止めて下さい。

 奈良県、及び同県教育委員会も、Aさんが中学校に通えるための支援を約束しています。Aさんが下市中学校において学習する環境は着々と整っています。

 障がいを持つ中学生に対するいじめにも等しい即時抗告を今すぐ取り下げAさんを快く迎えることが町の責務であると確信します。

 自治体、行政、教育委員会がこれ以上、訴訟を続ければ、「人にやさしい社会」「障がいを持つ人と共に生きる平等な社会が大切です」などは「絵空事」と児童、生徒は嘲笑するでしょう。

 下市町は人心の荒廃する寒々しい社会を率先して広げたいと願っているのでしょうか。

 皆さまの良識を信じます。

早くいい解決に至るといいですね。

脱線したようですが、この障害者自立支援法違憲訴訟は障がいのある人もない人も平等に生きられる社会を願っておこされていますので、同じ問題に取り組む多くの皆さんと繋がりながら進んで行くのは当然のことと思っています。

  藤 岡 毅

   7月17日追記*7月16日に町が即時抗告を取り下げると発表したとの報道がありました。 町の取り下げ判断はご本人にも町にもよかったことと思います。関係者の良識で30日の第1回弁論までに解決されることを願っています。

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全国弁護団事務局 通信 第11号 2009年7月7日

 

 旭川地方裁判所 第1回期日  北の大地で始まった審理

 

 本日午前10時、旭川地裁で第1回口頭弁論が開かれました。

 旭川の万字達弁護士が北海道弁護団のページで本日の裁判を報告してくれますのでご覧下さい。

 傍聴希望者がたくさん来場し、傍聴整理券のための抽選が実施されました。

 地元のテレビカメラも沢山きて、裁判官3名入場後の最初の2分間と裁判後に隣の弁護士会館で行なわれた集会など熱心に撮影をしていました。おそらく地元では放映されていると思います。

 原告の川村俊介さん、お母様、旭川の万字団員、札幌の西村武彦団員、竹下義樹全国弁護団長、大阪の小山操子団員、さいたまの柴野団員と私が原告側席に座りました。

 また、原告側で用意した原告のための手話通訳者2名も川村さんのすぐ前に座ることが出来ました。

 それ以外に傍聴者のための手話通訳者のための椅子が、固定椅子以外に2席用意され、もちろん傍聴券無しでの入場が予定されていましたが、傍聴人の中に手話通訳を必要とする方が一人もいらっしゃらないことがわかり、結果的には傍聴席スペースに手話通訳者はいませんでした。

午前10時04分~12分  竹下全国弁護団長の意見陳述

 障害者の生存権の意味、この裁判を起こさざるを得なかったことの意味を裁判官によくわかって欲しいと熱のこもった論陣でした。

10時13分  原告川村俊介さんが口頭及び手話で自己紹介を行ないました。

10時14分~25分 川村さんのお母様の意見陳述

 その間、原告の川村さんは証言台の横に立って、お母様が手話と口話で話すのを聞いていました。

川村俊介さんの持つ障害の特性と成長を語る陳述には傍聴席からすすり泣きがあちこちから聞こえてきました。

10時25分から35分 西村代理人の意見陳述

障がいのある人もない人も共に生きていく社会を阻害する障害者自立支援法のおかしさ、ひどさを説得力をもって論証していきました。

10時36分  

原告代理人 訴状陳述 

被告代理人 答弁書陳述

10時37分 原告の訴訟能力に関して激しいやりとり!

被告の国及び自治体の代理人は、「中身の審理を始める前に原告の訴訟能力の点について明らかにしてもらいたい」という主張を行ないました。

被告は答弁書において「訴状の記載による限り、原告が訴訟能力を有するか否かにつき重大な疑いがあることは否定し難い。…原告はまずこの点を明確にすべきである。」と主張しました。

原告の川村俊介さんは、確かに人とのコミュニケーションに支援を必要とし、知的に障がい、発達障がいがありますが、まさに裁判官と被告代理人の目の前で手話などを通して意思表示をしたばかりです。

私も川村さんから委任を受けている訴訟代理人として、裁判の前に本人と話しをし、あなたの支援をするための藤岡という弁護士であると説明し、意思疎通を図り、川村さんは理解してくれました。

川村さんには自分の不利益なことについて、私たち弁護士に支援を頼むという意思があり、それを表明することも出来ます。

それにも関わらず、被告が根拠なく、原告の川村さんの訴訟能力に疑問を出してくる。

これには竹下団長の怒りの声が法廷に響き渡りました!

「被告は何を根拠に原告に訴訟能力がないと主張しているのか。

 その具体的な根拠をしめして下さい。」

 それに対して、被告代理人は「訴訟能力があるかどうかは裁判所が調査することなので被告が何かをいうようなものでない。 能力がないと主張しているわけではない。」などと答弁しました。

 これには竹下団長の追撃です。

 「それは卑怯でしょう。

  障がいをもった人を否定する姿勢そのものです。

  私も視覚障害者の1級です。1級の障害者だから訴訟能力がないというなら私の訴訟行為も無効だというのですか。

  障がいを持った人が裁判を起こすことに対する侮辱じゃないですか。

  そこまで言う以上、具体的根拠を示すべきだと言っているんです。」

一語一句正確には再現できませんが、そのような趣旨の度迫力の弁論が続きました。

 

裁判長も被告側に「原告側は訴訟能力はあるという主張だと思いますので、被告がそれを争うならその理由を示すようにと言っています」という趣旨の発言をし、原告代理人側もこの点についての意見などを次回までに書面で明らかにすることにしました。

 

裁判後の報告集会も、集まった人が会場に入りきれず、最初にみんなで机を運び出す作業から始まり、熱気溢れる集会でした。

 

北の大地(西村団員が意見陳述で使っていたフレーズ)で審理が始まりました。

さすがに頻繁に旭川に全国から団員が毎回参加することは難しいと思いますが、機会をみてまた参加したいと思います。

ぜひ、広い北海道全土でこの訴訟運動の熱気が更に広がることを期待したいと思います。

今朝、朝日新聞、読売新聞などで、改めて応益負担の不合理性についての記事が掲載されているようです。

応益負担を根絶するまでこの闘いは止まりません。

障がいに起因する社会的障壁を除去するために障がい者自身に負担を強いることは、「その障害はあなたの責任です」とする障がい者差別です。

 

職業能力開発促進法第23条は「職業訓練は、無料とする。」と規定しています。

障害者の雇用の促進等に関する法律第15条は「適応訓練は、無料とする。」と規定しています。

同法第26条は「障害者職業センターにおける職業リハビリテーションの措置は無料とするものとする。」と規定しています。

 

それにも関わらず、障害者は働いたり、一般就労をめざすために働くことに対して、「利用料」を徴収されます。

障害者の場合、「就労支援」「就労移行支援」などの「福祉」「支援」の名目で、「障害者がお金を出すことで国民が納得し、サービス利用の権利が確立される」として、「利用料を払うことはいいことなのだ」と応益負担を支持する論説もあります。

 

「障害のない市民が職業訓練を受けるのは無償でなおかつ訓練手当てや交通費が国から支給され、障害を持つ市民が職業訓練を受けるならば事業所利用料や光熱費や人件費を払うことで国民は納得する!?」

 ほんとうにこれで「国民」は納得するんですか?

  藤 岡 毅

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全国弁護団事務局 通信 第10号 2009年6月16日

 

 和歌山地方裁判所 第1回期日 

地域で自立生活を送るため応益負担廃止と支給量保障を求める大谷さん

 

 本日午後1時30分、和歌山地裁3階2号法廷で第1回口頭弁論が開かれました。

 詳しい報告は和歌山弁護団の報告をご覧下さい。

 実は初対面の方が多かったのですが、地元和歌山の原告弁護団は山﨑和友団長はじめ、ベテランから若手までバランスのとれた充実した布陣です。

 竹下義樹全国弁護団長、大阪の辻川団員、中井団員、さいたまの柴野団員、京都の浅井団員、と東京の私が、全国各地から裁判に駆けつけました。

 

 裁判官3名が入廷し開廷。

午後1時30分 原告弁護団 訴状陳述 被告代理人 答弁書陳述

1時34分~43分 原告の大谷真之(まさゆき)さんが自分の言葉で意見陳述を行いました。

 「障害をもっていても地域で生活することが夢でした。その夢も現実となったけれど一人暮らしにはヘルパーさんの介助が必要。ヘルパーさんに介助してもらい初めて普通の暮らしができます。普通の生活をしていて負担金が発生するのはおかしいと思いませんか。」と訴えました。

1時43分~53分 和歌山弁護団長岡弁護士の意見陳述

パワーポイントを大型スクリーンに映しながら、障害自己責任論の不合理性等障害者自立支援法の応益負担制度が憲法・障害者基本法・障害者権利条約に反することのポイントを説明しました。

弁護士になる前から障害を持つ人の支援活動をしてきた長岡弁護士ならではのこの訴訟にかける気持ちが入った陳述でした。

1時53分~2時 竹下全国弁護団長の意見陳述

いつにも増して迫力のこもった陳述でした。原告の大谷さんの言葉に触発されたかのようでした。

 

裁判終了後、和歌山東急インにて行われた弁論報告集会でも、「裁判官3名は3人の陳述をよく聴いていてくれたようだ」との感想もありました。 

会場からは「今までみんなおかしいと思いながら我慢してきた。こうやって、おかしいことにおかしいと声を挙げていくことの素晴らしさを本当に実感しました。」との感想が印象的でした。

 

私はこの訴訟は全国で62名の障害をもった原告が12の地方裁判所で闘っていて、すべてがつながっているのですと集会でアピールしました。

 

ちなみに政府発表では身体障害者366万、知的障害児者55万、精神障害者303万の合計約724万人とされます(内閣府作成平成20年版「障害者白書」4頁)。

しかし知的障害者は総人口の2%程度存在すると言われています。私の実感でも知的障害者の数が全国で55万人のはずはありません。日本の総人口は1億2706万人(総務省発表平成20年3月31日現在)と言われますので2%は254万人ですので200万人ほど増えるべきとして923万人。

また、現行法の前提とする「障害」の定義自体、身体的機能喪失に着目した医療モデルのため、難病者、発達障害者、高次機能障害者などが障害者手帳の対象外になっています。

そのため、概ね全国で障害を持つ市民は1000万人は下らないと思われます。

この障害者自立支援法訴訟は現在62名の原告により闘われていますが、この1000万人の障害者の共通の問題であるとともに、障害を持たない市民をこそ含めたすべての市民が安心して暮らせる社会を作るための運動です。

 

  藤 岡 毅

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全国弁護団事務局 通信 第9号 2009年6月5日

  

    京都地裁 第2回 6月1日

 今週は6月1日月曜日に京都地裁の第2回期日に出席してきましたので最初に簡単に報告します。

 午前10時に101号大法廷にて開廷しました。

 原告弁護団の民谷渉弁護士が意見陳述を10時5分~15分の約10分間行ないました。

 障害者福祉施策における「障害」の意味が、治療の対象として治すべき病気と把握していたかつての「医療モデル」が誤りであり、社会環境に障害の本質があるとする「社会モデル」として把握するべきことを解き明かし、障害者自立支援法の利用者負担が、本人が自力更生にて克服するべきとする医療モデルと同じ過ちであることを指摘しました。

 

 

 

盛岡地方裁判所 第1回期日  

 6月5日金曜日午後1時30分 盛岡地裁で第1回口頭弁論が開かれました。

 岩手弁護団のウェブにて既に報告が掲載されています。

http://info.jiritsushien-bengodan.net/Home-1-4

 訴状、答弁書陳述のあと、

1時33分~40分 竹下義樹全国弁護団長からの意見

1時40分~52分 佐々木良博岩手弁護団長からの意見

 上記岩手弁護団ウェブの訴訟報告に意見書も添付されていますのでぜひご覧下さい。

 佐々木団長の意見陳述は、障害者自立支援法の違憲性を見事に論証していたと思います。

1時52分~2時03分 原告佐々木亮さんのお父様の佐々木直人さんの意見陳述がありました。

これも、上記岩手弁護団ウェブに添付掲載されています。

親として成長を見つめてきた過程を語り、「食事や移動、排泄という生きるための最低限の支援にも、これを『益』として負担を求めるという社会保障制度があっていいものでしょうか。『障害を持つことはあなたの責任ですよ、これは障害者税なんですよ』と言わんばかりの制度だと思われます。」と気持ちを述べました。

 

さて、この岩手訴訟において、国は知的障害者である原告佐々木亮さんの訴訟能力に疑問を呈してきました。

この点の問題点について私は財団法人日本障害者リハビリテーション協会発行の「ノーマライゼーション 障害者の福祉 2009年3月号」で論じていますので詳しくはお読みください。

これは全国弁護団ウェブの「メディアへの原稿掲載」欄の添付ファイル2として掲載しているものです。

簡単にいえば「知的能力に問題があるから裁判で争うという原告の意思が確認出来ないから、裁判は無効である」という主張です。

しかし、国は「障害者も障害者施策には税金が使われているというコスト意識を持つことが大切」という趣旨の主張で応益負担が正しいと主張してきたはずです。

それは、「障害者も障害を持っている分だけ責任を負え」という主張です。

原告と原告弁護団はそれがおかしいと裁判を起こしました。

そうすると、「お前たちには責任を負う資格はない。」として、原告が国から権利を侵害されているというという訴えそれ自体を葬り去ろうとします。

こんな理不尽な話があるのでしょうか。

応益負担の行政処分書も障害者本人宛てに送りつけています。

事業所も応益負担利用料請求書を本人宛てで送りつけています。

国の論理に従えば「負担を課されていると理解出来ない知的能力の者に対する負担処分も無効」となるはずではないですか。

もちろん、子どものケンカじゃないんだから本気でこんな論争はしたくありません。

しかし、そうも言いたくなるほど、政府、国の主張は、弱い者に対して、冷たく、論理整合性の欠片もない、御都合主義ではないですか。

 

この裁判は、障害者自立支援法に関する国の本音、障害者に対する基本的姿勢を浮き彫りにしてくれます。

そういう意義があるということをみなさまぜひ、多くの人に伝えて下さい。

 藤 岡 毅

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全国弁護団事務局 通信 第8号 2009年5月8日

 

第二次一斉提訴

 4月1日に障害を持つ原告28名による第二次全国一斉提訴が行なわれ、第一次原告29名と合わせて全国12箇所の地裁で57名が原告として障害者自立支援法違憲訴訟を行なっています(原告児童の親として損害賠償訴訟での原告である私を加えると58名)。

各地の様子は、各地の弁護団の報告と

勝利をめざす会のホームページ   

    http://www.normanet.ne.jp/~ictjd/suit/index.html

 でご覧下さい。

 全国の第1回期日は全て全国弁護団の団長と事務局長は出廷する予定ですが、第二回から全ての参加は難しいので全国の弁護団員が分担して他の地域の地裁に参加しています。

 本日藤岡は福岡地裁の第2回期日に出廷してきました。

 

福岡地方裁判所 第2回期日  第二次一斉提訴原告山下さん登場

 

 本日午後1時30分 福岡地裁301号法廷で第2回口頭弁論が開かれました。

 第二次一斉提訴の原告である山下裕幸さんの事件も第一次の原告平島さんの事件と一緒に審理されることが決まり、山下さんの訴状が原告弁護団より陳述されました。

 次に原告側の意見陳述が実施されました。

 ① 原告山下裕幸さん

 ② 補佐人鶴我房子さん 

 ③ 原告代理人小山明輝弁護士

 ④ 同弁護士藤岡毅

 の順で行なわれました。

① 1980年生まれの原告の山下さんは、かつて高校での寮生活での思いがけない仕 打ちを原因として、引きこもりになった経験をきっかけに、現在通所している授産施設つくしの里に通うようになり、仕事を経験して生きがいを感じてきたこと、自立支援法がそんな自分から人間としての誇りを奪ってしまうことを力強く訴えました。

② 山下さんの通う授産施設つくしの里の施設長の鶴我房子さんは、つくしの里の生活で山下さんが成長してきた姿、つくしの里の立ち上げから実感してきたことを淡々と話され、この法律が真の自立を困難にするその本質を理解してもらうよう裁判官に訴えました。

③ 福岡弁護団の小山弁護士は、応益負担の矛盾を指摘し、原告山下さんが電動車いすを利用することで障がいを持たない人と同じように移動できることが「利益」なのかと問いかけ、また、被告国らが裁判所に提出した準備書面での主張はもノーマライゼーションの完全否定だと断じました。

④ 私は、この3月末日に厚労省が国会に上程した見直し法案の欺瞞に裁判官が惑わされることないよう注意を喚起する意見を述べました。

 

  裁判後の報告集会も第1回のときにも増して盛り上がりました。

  私は集会で、この裁判の意義として、「国の本音」が浮き彫りになる機能をコメントしました。

  このことは小山弁護士も法廷で指摘していましたが、国の主張には、障害者福祉の原理を完全否定するような「障害者自立支援法の本音」が出てくるのです。このこと自体がビッグニュースとして報じられてもおかしくないほどの問題です。

 

 被告が本日法廷で陳述した準備書面の内容のポイントの数点に次のものがあります。

 

 原告側の主張:「障害を持たない市民が働く場合に事業所利用料を払わないにも関わらず、障害を持つ市民の場合に働くことに事業所利用料が課せられるのは、障害者差別で、憲法第14条法の下の平等に反する。」

 

 被告国、自治体の反論の骨子

 「障害者自立支援法とは、障害者を支援する法である以上、障害者と障害者でない者との差別や区別といったことが問題となる余地はおよそないのである。

そうであれば,当該社会保障給付が行われるに当たって問題となる利用者負担についても、当該社会保障給付を受ける障害者の間での区別,差別を問題とするならばともかく, 当該社会保障給付を受ける「障害者」とおよそ当該社会保障給付を受ける余地のない「障害者でない者」との間の比較において, 当該利用者負担についてのみ取り上げて, 憲法14条の「平等」を問題とする余地はないというべきである。……したがって,憲法第14条に違反するかのようにいう原告らの前記主張は, 失当というほかない。」

 

この被告国らの主張、裁判所に提出した公式見解(これは福岡地裁だけでなく、各地の裁判所に対して全く同じ主張が提出されています)は正しいでしょうか。

そもそも、障害者福祉とは、ノーマライゼーションとは、障害を持つ人が障害のない人と同じよう差別されることなく平等に社会に参加できるような社会にすることを目的としているはずであって、まさに、障害を持つ人と持たない人との間での平等を目的としている制度です。

国は、「障害者は障害者集団の中での差別がされないようにすればよいのだ、障害を持つ市民と持たない市民との平等を考える余地はない」という理念から障害者自立支援法を作ったのだというわけです。

国は普段言わない本音でも、裁判になるとこの法の本質を正直に説明してくれます!

障害者差別は障害者同士の問題であって、障害を持たない人には関係がない。ということです。

以上の国の主張、障害者自立支援法を支える国の思想の根本的過ちについては、今後、各地の地方裁判所で、原告弁護団から徹底的に批判されます。

そのため、ここで触れるのはこの程度にしておきます。

 

今後の各地の裁判がほんとに楽しみです。                  藤 岡 毅

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全国弁護団事務局 通信 第7号 2009年3月25日

 

 さいたま地方裁判所 第1回期日  密度の濃い法廷という印象でした。

 

 午前10時30分さいたま地裁105号法廷で第1回口頭弁論が開かれました。

 詳しい裁判報告は埼玉弁護団の報告をご覧下さい。

 原告7名と付き添いのための最低限の要員(家族等)、弁護団員などで法廷の柵内は立錐の余地のない状態でした。傍聴席にも3名分の原告代理人席を設けるなどの対応でした。

 10時30分 裁判官3名が入廷し開廷。

10時31分 原告弁護団が訴状陳述

10時31分~48分 埼玉弁護団長 柴野和善弁護士による訴状の要旨の陳述がありました。

パワーポイントにより、ときおり原告本人の様子がわかる写真の画像もまじえながら、いかに障害者自立支援法が障がいをもった人々を差別し、幸せと生活を破壊するものかを、事実と論理に基づき説明していきました。

ほとんど原稿をみないでそらんじるくらいの語りには説得力がありました。

10時49分 被告答弁書陳述

 手続に関するやりとりが少し。

10時51分 原告側からの意見陳述開始

10時51分~11時01分 原告の五十嵐良さんの意見陳述

脳性まひの障害を持って生まれた五十嵐さんが自分の口による人生をかけた陳述です。利用者負担を理由に辞めていった仲間のこと、自分にとっての作業所の意義などを述べました。

障害当事者自身による声、言葉には、弁護士では代替出来ない価値があります。

裁判後の集会でも参加者から口々に五十嵐さんの陳述には勇気づけられたとの感想がありました。

「裁判官の皆さん、どうか、私たちの作業所を一度見に来て下さい。」との声に裁判官はこたえてくれるでしょうか。

 11時01分~11時11分 原告新井育代さんの訴訟補佐人としてのお母様たかねさんの意見陳述

 すばらしすぎて私がコメントするのもはばかられるほどの陳述でした。

 私はこの通信で、何度となくご家族の陳述を見聞きしての「感動」を伝えてきましたが、首都圏の方は傍聴初参加で、私が誇張で言っているわけでないことが理解されたと思います。

 最後にお母様が

「育代は意志を表すことが困難なため、選挙の時、1票を投じることができません。

 障害者自立支援法の影響をもろに受ける育代が1票を投じられないことを、どんなに悲しく、苦しく思ったか想像していただけるでしょうか。…

 政治は、声をあげることが困難な育代たちの声に耳を澄まして聞いてくれませんでした。行動することが困難な育代たちのことを,目を凝らして見てくれませんでした。

しかし,司法を司る裁判官は、きっと私たちの声に耳を傾けてくださるだろうと、大きな期待をもって裁判に臨みました。」

と話したとき、裁判長は確かに頷きました。

11時11分~11時18分 原告中村英臣さんの訴訟補佐人として斎藤なを子さんの意見陳述。

プロのアナウンサーも顔負けの冷静沈着な声と話しで、法の誤りを正して欲しいという原告とお母様の声を代弁しました。

それは全国の大勢の障がいをもつ人々、家族の声を代弁するものでした。

11時18分~24分 全国弁護団長 竹下義樹弁護士による意見陳述

障害者自立支援法の異常な立法経過、受益者負担の不当性、裁判に立ち上がった原告の思いの意味を裁判官3名に強く訴えました。

 

その後、今後の進行に関するやりとりのあと、1点重要な指摘が埼玉弁護団員から裁判長に対してありました。

それは聴覚障害をもつ傍聴人の二人の手話通訳者を傍聴券発行の対象者として取り扱ったことの不合理性・問題点に関するものです。

たいへん重要な点ですのでここでの説明は埼玉弁護団のページに譲りますが、いずれにしても、この障害者自立支援法訴訟運動は、障害者自立支援法の中の問題だけでなく、障がいを持つ市民の立場にたった司法バリアフリーの点など、幅広い視野にたった活動なのです。

 

 裁判の後、埼玉会館に場所を移して、1時間以上、裁判報告集会が行われ、たくさんの支援する人々の熱気で溢れました。

 内容はもり沢山でしたが、とにかく、大勢の熱い心と志をもった人々、全国の人々とつながっている意義ある運動、ますます勢いを増す運動であることを全国弁護団事務局長を務める私も改めて感じ入った1日でした。

 でも、この運動を知らない人もまだまだ全国に沢山いるのが現実だろうと思います。

 この輪をもっともっと広げていきたいと思います。

 ますますのご支援をどうかよろしくお願いします。

 藤 岡 毅

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国弁護団事務局 通信 第6号 2009年3月11日

 

 京都地方裁判所 第1回期日 

 

  午前10時、京都地裁203号法廷で第1回口頭弁論が開かれました。

  次回6月1日午前10時の第2回目の法廷は101号の大きな法廷になる予定です。

 なお、詳しい裁判報告は京都弁護団の報告をご覧下さい。

 裁判所による傍聴券発行はありましたが、車いす利用の障害者とその介護人は優先的に配布されたようです。

 裁判官3名が入廷し開廷。

原告弁護団が訴状陳述、被告代理人答弁書陳述。

午前10時05分~07分 京都弁護団の藤井豊原告代理人が、この訴訟の原告の訴えのエッセンスを簡潔に説明しました。

10時08分~16分 原告稲継学さんのお父様稲継清秀さんが補佐人として意見を述べました。

長男の学さんが幼くして難治性の「点頭てんかん」を発症し、身体障害1級と療育手帳Aの重度重複障がい者となり、夫婦で「この子を1日でも長く生きさせてやりたい、これが私たちの挑戦だ」と決心してから早42年が経ちましたという原告と家族の歴史が話されました。

制度もない中、親・関係者の努力で作り上げた共同作業所を基礎にして、制度を活用しながら社会福祉法人を設立し、この間7800万円の自己資金を投じて実現した私たちの施設を通うのに負担金を出さないと使えないということの理不尽さんを訴えました。

10時16分~22分 全国および京都弁護団の団長竹下義樹弁護士がこの裁判がなぜ起こされたのかの意義、障害のある人にとっての自立と社会参加の意味、全国で裁判という手段で立ち上がった原告の思いの意味を述べました。

 

 裁判の後、午前11時から弁護士会館で報告集会が行われ、たくさんの支援の人々が集まりました。

 私は全国の地裁での現在の審理の状況、2009年4月1日の第二次全国一斉提訴に向けた状況などを報告したうえ、次のようなことを話しました。

 

 障害福祉施策において「利用者負担」が必要である根拠について、厚労省サイドは次のことを挙げます。

「利用者負担は『濫費の抑制』『モラルハザードの抑制』のために必要だ。」

つまり、「負担金がないと、無駄使いが増え、障害当事者が「何でもタダ」と思って歯止めが掛からず、タダ乗りが横行してモラルが崩壊してしまう。それを止めるための制度として負担金を課すことが合理的である。」という理由です。

ほんとうでしょうか?

それは実証的に論証された話でしょうか。

たとえば、手話通訳について、障害者自立支援法施行に伴って負担金の徴収を試みた自治体もありましたが、障害当事者の反対で現実には徴収されていません。

だとしたら、現在、聴覚障害者は必要もないのに無駄に手話通訳ばかり使って福祉費用ばかりかさんで、モラルが崩壊してどうしようもない状態になっているということになってしまいます。

視覚障害者のガイドヘルプは支援費制度時代、応能負担としてほとんどの人に負担金はありませんでした。

だとすると、当時視覚障害者はガイドヘルプを必要ないのに濫用してモラルが崩壊状態だったということになります。

しかし、そんな話を私は聞いたことがありません。

国の側はそういうことを事実に基づいて実証的に証明する責任があるはずです。

知的障害者のガイドヘルプの利用が伸びたことは社会参加の機会が増えて、望ましいこと、障害者福祉の目的の実現に沿ったものであって、目に余るような不必要な支出があったわけではないはずです。

また、そもそもたとえば介護についても、支給決定という行政処分で行政庁自身が各自の必要量を必要性に応じて決定している以上、仕組みとして、必要以上の利用にならないはずです。それを否定することは自分の決定の正当性が疑われます。

就労センターに通う障害者が月22日通うことに対して、利用料制度の導入により日数を減らせという理由はありません。ならば30日通う人は通い過ぎだから利用料制度で適正日数に減らすことができるというとでもいうのでしょうか。

あまりにも現実離れした話です。

適正日数以上、働き過ぎの障害者のことは、体が壊れないか心配して配慮するのが障害者福祉の先にやるべきことでしょう。財政破綻の心配より障害者の生命・健康の心配の話になるはずです。

こういう具体的な事象(本当に利用者負担により濫費抑制になるのか。利用者負担がなければモラルが崩壊してしまう恐れがあるのか等)について、私たち弁護士集団より、いま集会に参加されている、障害当事者、家族、支援者、障害福祉関係者のみなさんのほうが事実を知っています。

ぜひ、陳述書などの形にして、それらを弁護団に送ってください。

そういうほんとうの事実に基づいた真実の声を裁判官に届けましょう。

私たちは、国側のいう「利用者負担の根拠・正当性」に対して、具体的事実に基づいて実証的に反証できるはずです。

  藤 岡 毅

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全国弁護団事務局 通信 第5号 2009年2月20日

 

 神戸地方裁判所 第1回期日 当事者と家族の語りがみんなの心を震わせる。

 

 本日午前10時、神戸地裁101号大法廷で第1回口頭弁論が開かれました。

 詳しい報告は兵庫弁護団の報告をご覧下さい。

 裁判官3名が入廷後、2分間のテレビ撮影。

開廷後、原告弁護団が訴状陳述。

午前10時~10時06分 竹下全国弁護団長が、なぜ原告らがこの裁判を起こせざるをえなかったかを説明。

10時06分~12分   兵庫弁護団をとりまとめる福島健太弁護士がパワーポイントを使いながら、利用者負担がなぜ問題なのか、なぜ憲法違反なのかを意見陳述。

その後、訴訟手続に関するやりとり。

10時19分~30分 全盲の視覚障害をもつ原告吉田淳治さんの意見陳述。

視覚障害者が外出するために直面する様々な困難、書類がわからないことによる生活上の支障など、当事者にしかわからない生活実態が語られました。

また、被告から提出される書類についても、自分はパソコンが出来るので、DVD、フラッシュメモリーなどに情報を入れた媒体を提出してくれるよう合理的配慮を求める点は原告弁護団を含め訴訟関係者に対する重要な指摘です。

さらに、法廷での裁判官、原告代理人、被告代理人のやりとりも、今、誰が話しているのかも聞いていてわからないという不利益があり、その是正を求めたいという指摘も、同様に訴訟関係者が注意するべき重要な点です。

 

10時30分~41分 重度の知的障害をもつ原告吉本春菜さんのお母様裕子さんの意見陳述。

春菜さんが生まれてからの今日までの語りは法廷にいたすべての人々の心の奥底に迫る圧巻の陳述でした。この表現は被告代理人からも異議がないだろうと思います。

兵庫弁護団の報告に掲載されると思いますが、文字だけではすべては伝えきれませんが特に深く印象に残った陳述の一部を再掲させていただきます。

 

春菜と過ごした21年。たくさんのことを学びました。

「生きているということ」が幸せだということ。

たくさんのお友達との別れもありました。

与えられた能力を最大限にがんばって、力尽きた方、かぜをこじらせて肺炎になった方等々、障害をもって生まれたのも本人に選べなかったように、人生を終える時も、本人も家族も選べないということ。

朝、「おはよう!」と普通に目覚めることが、どれだけ幸せなのかということ。

春菜は嫌な事は記憶に残さず、自分によくしてくれる人の顔は覚えていて、感謝の心を笑顔で返してくれるのです。

目を見てニッコリ笑う春菜の笑顔と声にどれほどの元気をもらったことでしょうか。

 私は春菜に精神や心がけなどを育てられましたし、たくさんのいい仲間と出会うことができました。

 春菜の周りにいる人はみんな笑顔になります。

 行動としてはできないことがたくさんありますが、たくさんの人の心を癒しているのです。

 世の中の邪魔者、足手まといではありません。一人の人として春菜でなければならない役目を果たしているのです。

 私達は、特にルールを犯すこともなく、ごくごく普通に生活してきました。

 国は国民が最低限人として普通に暮らせるよう保障しなくていいのですか?

 春菜は他の人より小さい頃から能力以上の努力をたくさんしてきました。私がその立場だったら耐えてこれたかどうか…

私は母として生命の限り、どんなことをしても春菜が笑顔で毎日生活できるよう育てていきます。ただ、私の力が尽きた時のことを思うと、心配で不安でいたたまれないのです。今なんとかしなければと勇気を出してここに出てきました。何よりも生命が大切で、生命の重さはどの人もみんな同じだと思います。

 

私から付け加えるコメントはありません。

 すべての障害を持つ人、家族、関係者の思いを代弁しています。

 

 裁判後、弁護士会館で行われた報告集会、勝利をめざす兵庫の会結成集会もたいへんな盛り上がりでした。

 兵庫県下の様々な団体、多くの市民の力が結集しつつある雰囲気が感じられました。

 最近「所得応分型負担」へ転換する政府の方針などと一部報道されています。

 現状の仕組みには手をつけず、障害に基づく不利益の解消は社会の公的義務であるという根本原則を確認することもなく、「今の法律は実は所得に応じた応能負担制度なのです」と国が主張しやすくするために条文の表現の修正を試みるというものと思われます。

 障害を持つ人も持たない人も平等に生きるという当たり前のことに対して障害を持つ人だけが特別にお金が徴収される社会、そんな冷たい社会を肯定することは私にはできません。

 この訴訟運動の意味は益々高まります。

  藤 岡 毅

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全国弁護団事務局 通信 第4号 2009年2月10日

 

 大阪地方裁判所 第1回期日 わかりやすい説明が印象的。

 

 本日午前11時、大阪地裁で第1回口頭弁論が開かれました。

 詳しい報告は大阪弁護団の報告をご覧下さい。

 大阪は原告5名、実働弁護団員も16名を超える大所帯。当然のごとく大法廷の傍聴席があふれることが予想されたため傍聴券が発行されました。傍聴席はもちろん満員、法廷に入れなかった皆さんは大阪弁護士会会館での集会に参加されました。

 法廷では最初に大阪弁護団の辻川圭乃(たまの)弁護士によるこの訴訟の焦点である障害者自立支援法と利用者負担の問題性に関する意見陳述がありました。

 辻川弁護士の陳述の進行にあわせ、法廷内のスクリーンにパワーポイントで要点が映されました。

 「障がいのある人たちが当たり前に生きるために不可欠な支援に対して負担をさせるべきではない」ことを論じました。

 7分間ほどでしたが、難しくなりがちな裁判の内容・意味がかみ砕いて説明され、裁判後の報告集会でも、とても分りやすく、福祉現場の方からも、改めて利用者負担がおかしいということが確認できたと好評の陳述でした。

 次に原告松田好弘さんが自身の口でご自分の言葉で意見陳述をされました。

 障害者自立支援法施行当初、利用者負担の過酷さに家にこもる生活になってしまったという話しは、この法の「自立」という美しい看板と法の現実の効果の極端な落差を裁判官に印象付けたのではないかと思います。

 ご自身は報告集会で「緊張した」と謙遜されていましたが、そうは感じさせない立派な陳述でした。

 次に原告大江晴樹さんが、お金を稼ぐために働きに行っているのになぜお金を取られるのか納得が出来ないとご自分の意見を訴えました。

 知的障がいのある大江さんが大法廷で立派な発言をする姿を裁判官3名はどう感じたでしょう。私は畏敬の念を覚えました。

 続いて大江さんのお母様が利用者負担による家計への影響などを語り、実直そうなお人柄とともに事実の重さが裁判官に伝わったのではと思います。

 最後に全国弁護団竹下義樹団長からこの訴訟の意義の説明がありました。

 自身が盲人である竹下団長が点訳された文書を指で読みながら陳述する姿も、「点訳文書を利用することは障がいを持つ人の特別な利益なのか」と裁判官に考えさせたのではないかと思っています。

 裁判後の集会で広島弁護団の紅山弁護士とともに、スピーチを求められました。

 私はこんな話しをしました。

 

 応益負担について、「サービスはお金で買うもの」と厚生労働省の担当者は国会答弁してその正当性を主張しました。実際私も2007年10月、目の前でその通りの説明をする同省の担当者の言葉を直接聞いていますので彼らが本気でそう考えていることは間違いありません。

 しかし、負担の対象として議論しているのは障害者の憲法25条、13条、14条等で保障された基本的人権です。

 私は言いたい。

 「基本的人権はお金で買うもの」と憲法の教科書のどこに書いてありますか?

 

 障害福祉施策の利用は、障害者が差別されることなく社会に参加することの出来る公的権利であり、公権力はその実施義務者です。

 例えば、どうして「障害者用トイレ」、「誰でもトイレ」を利用する人から特別な利用料を徴収しないのでしょうか。

 それは、今日、バリア除去のための施策利用のために支援の対象である権利者である障害当事者にその費用を負担させることは不合理な差別であり、公共で負担するべきとの規範、社会通念が形成されているからです。

 

 「障害福祉施策の利用のたびに障害当事者に費用負担を強いていた」

 え、そんな馬鹿げた時代があったの!

 信じ難い!

 そういう時代が到来します。

 この訴訟運動は間違いなく未来に繋がっています。

藤 岡 毅

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全国弁護団事務局 通信 第3号 2009年2月5日

 

 広島地方裁判所 第1回期日 

 全国で最初に立ち上がった秋保夫妻の陳述が心に染み入る!

 

 本日午後1時30分から、広島地裁で第1回口頭弁論期日が開かれました。

 大きな法廷は入りきらない傍聴人の熱気で溢れました。

 

 なにしろ、この広島地裁で提訴した原告秋保和徳さん、原告秋保喜美子さんは、全国の訴訟運動のなかで一番最初に裁判をするため原告になります!と立ち上がったご夫妻です。

 既に2007年11月頃にはご夫妻で裁判をしてでもこの悪法を止めさせたいとして決意されていたご夫妻です。

 いまでこそ、第一次原告の障害者29名、そして、現在準備されている第二次原告と集団訴訟になっていますが、秋保さんご夫妻は全ての障害を持つ市民、そして全ての人々のため、全国で先駆けて立ち上がった勇気あるご夫妻です。

 詳しくは広島弁護団のサイトに報告予定ですが、私からも簡単に皆さまにご報告します。

1時30分

 訴状の陳述より前に、まず、原告秋保和徳さん、原告秋保喜美子さんの意見陳述が行われました。

 最初に和徳さんが、障害があるために必要な支援を益として負担を課すことは「障害のある人が人間として生きること」を否定されているようで悲しみとともに大きな怒りがこみ上げてきます。と訴えました。

 障害当事者自身による訴えは3名の裁判官の心に響いたのではないでしょうか。

1時41分

 次に喜美子さんがご自身の生涯をたどり、地域で暮らすことを真剣に願っている和徳さんと出会い、ボランティアグループのみなさんによる手作りの結婚式を上げ、人生の新たなな出発を機に「社会の中で暮らしたい!」という願いのもとに長かった入所施設から地域生活に踏み切った歴史を語る姿には、弁護団員たちも泪をごまかすのがたいへんでした(裁判官はどうだったでしょう)。

 応益負担の導入はまさに秋保さんご夫妻の生きてきた歴史、人生を否定するかのごときものだという意味が分りました。

1時50分

 広島弁護団の団長石口俊一弁護士による意見陳述。

 秋保さんが働く作業所を訪問してご夫妻の地域で積極的に生きる生活を切り崩されようとしていることを実感したこと、

 障害者自立支援法が「負担」という名目で、残酷な生活水準の切り下げを障害のある人にだけ押し付けることに正当な根拠を見出すことは出来ないことなど、

 数々の人権裁判を闘ってきた石口団長の言葉には重みを感じました。

1時56分

 広島弁護団主任紅山綾香弁護士による訴状の説明。

 同弁護士は広島での訴訟運動の闘いの中心として2007年から牽引してきました。

 生きるために必要不可欠な支援を受けるために、応益負担が課せられ、ときには自治体から借金までしなければならないほどの現実が健康で文化的な最低限度の生活といえるでしょうかと訴える言葉には誰しも頷いていたと思います。

2時2分

 竹下義樹全国弁護団長による意見陳述。

 この法の立法経過の異常性、社会参加と自立を拒むこの法が憲法の精神から到底理解できないこと、障害をさらけ出して訴訟に踏み切った原告の決意を裁判官が理解されるようアピールする迫力ある陳述でした。

 

 その後、裁判官から訴訟法的な観点からの技術的な指摘が原告代理人、被告代理人に対してなされました。

 被告は、4月16日までに詳しい主張を明らかにすると答弁しました。

 現在、障害者自立支援法の見直しが議論されており、おそらく改正案が公表される日程を見込んでのことと思われます。

 第2回口頭弁論は4月23日午後1時30分と指定されました。

 裁判のあと、弁護士会で報告集会が開催され、足の踏み場もないほど会場ぎっしり人が集まり、みなさんの真剣な表情にあらためてこの訴訟への関心の高さを感じました。

 広島のめざす会の代表、広島市立大学広島平和研究所長の浅井基文先生も参加者の多さに感激していらっしゃいました。

 第二次提訴予定の当事者の方からのアピールもありました。

 

 この裁判は社会を変えていくための運動です。

 ますます盛り上がるこの運動に素晴らしいみなさんと一緒に関われることに喜びを感じています。

 藤 岡 毅

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全国弁護団事務局 通信 第2号 2009年1月30日

 

 福岡地方裁判所 第1回期日 この感動を伝えたい。

 

 本日午後1時10分から、福岡地裁で第1回口頭弁論期日が開かれました。

 福岡弁護団のページに報告がありますのでご覧下さい。

 いやあ、感動しました。

 テレビで実況生中継したら国民みんなが釘付けになるのではと思うほど、どんなドラマを見るより素晴らしい時間と空間を共有したという充実感を感じます。

 

 1月22日の大津地裁でのお母様お二人の意見陳述にも胸を打たれましたが、今日は九州で現在のところただ一人原告として立ち上がっている平島龍磨さんの、トップバッターでの登場で緊張してもおかしくないところを、「原告の思い」の堂々たる陳述があり、障害当事者本人による力強い陳述には本当に感動しました。

 裁判後の集会でも、普段は冷静を装っている弁護団員が口々に感動したと率直に感想を述べていました。

 改めて、平島さんにはその勇気に心より敬意を表します。

 平島さんは法廷で「提訴して本当に良かったです。」と言い切りました。私もそんな平島さんと共に闘えることに喜びを感じます。

 次に、平島さんが通所している通所施設の施設長赤松英知さんの意見陳述がこれまた素晴らしかった。

 裁判員制度用の大きな法廷の隅々まで朗々とよく響き渡る声で陳述された障害者自立支援法のもたらす障害福祉現場への過酷な影響と矛盾は、とてもわかりやすく、臨場感あるものとして裁判官に伝わったのではないかと思います。

 続いて、福岡弁護団を率いている中村博則弁護士の弁護団としての陳述がありました。

 その冒頭の部分を次に再現します。

 

  障害者政策は「社会の鏡」であると言われます(甲A24号証)。

 「社会の鏡」であるという意味は、障害者に対してどのような政策を取っているかが、その社会の本当の豊かさの実態を示すものだということです(甲A17号証)。障害者が暮らし易い社会は、すべての人が豊に暮らせる社会であるということです。

  障害者がレストランに就職したときの経験が新聞で報道されたことがあります(甲A40号証)。当初は1日2時間しか働くことができず、会社側から福祉施設への転職を提案されましたが、店長が「たった1年で解雇するのか」と猛反発しました。その店長がノートで情報を交換しながら支援し、3年後には1日5時間働くことができるようになりました。その過程で、パートやアルバイトの従業員もその障害者を気遣うようになり、接客対応まで向上し、会社側は、「いかなる研修やマニュアルにも勝る効果があった」と言っているそうです。

  この例で、レストランを社会や国に置きかえても同じことが言えると思います。障害者を暖かく見守ることのできる社会や国は、すべての人が互いに思いやりを持って豊かに暮らしていけるということです。

  しかし、障害者自立支援法は、障害者の自立を支援するどころか、自立を妨害し、それどころか障害者のこれまでの生活そのものを否定するような法律です。

 

 中村弁護士の暖かい人柄が滲み出ている陳述です。

 九州人の暖かさなのかもしれません。

 聞いていて、何とも暖かい気持ちにさせられる陳述です。

 この訴訟の意義の根底にあるものが感じられます。

 

 最後に竹下団長からの言葉。次の3点。

 ① 立法時点で欠陥法であることが明らかなこと

 ② 自立と社会参加という障害福祉の目的と相反する応益負担、受益者負担

 ③ 障害をさらす原告の勇気と決意の意義

 裁判後の集会で重い障害を持つお子さん(たぶん成人)のお母様から、「竹下弁護士の法廷での発言には障害を持つ親としてほんとに有り難い」という趣旨の泪声の言葉もいただきました。

 この団長なくして有り得ないこの障害者自立支援法訴訟です。

 

 

 ………………………………………

 それにしても、障害者自立支援法って何なんでしょう。

 自立とは、経済的自立だけではありません。

 一人ひとりの人間がその人らしく、個々の尊厳を尊重されて活き活きと生きていくことではないでしょうか。

 この法は自立を上から強要しています。

 強要される自立が本当の自立でしょうか。

 仮に国の考える、金銭的自立、経済的自立だけしかみない皮相な自立観(もちろん、お金を自分で稼いで自尊心を持つことはとても大切なことですし、働くことの喜びは代え難い価値があり、障害者の一般就労がさらに実現する社会は望ましいことですが、この法の想定する自立観はいびつで、一面的ではないでしょうか)を前提としても障害者自立支援法が論理破綻を来たしていることは自明です。

 今日の4名の意見陳述を聞いて、今更ながら思いを強くしました。

 だって、国は障害者が金銭的、経済的自立が出来ていないから、その自立を促進、支援するためにこの法を制定したと言っていたのでしょう。

 だったら、どうして、その金銭的自立が出来ていない人に金銭負担を強いることが自立の促進という効果と結びつくのでしょう。

 金銭的自立が出来て、負担が苦にならなくなった人、つまり公的自立支援が不要な人に負担させるならば論理的整合性がありますが、金銭的自立が全く出来ていないため負担が苦になる人にだけ負担を強いる法律。

 公的支援の必要が高い人にはそれに応じて重い負担を強いる法律。

 福岡弁護団も次のとおりこの法の欠陥を看破します。 

 

 障害が重い人ほど重い負担を課すということは、働けない人ほど重い負担を課すわけですから、耐えられるわけがありません。

 応益負担というのは、最初から実現不可能な制度なのです。

 この法の基本思想における論理矛盾は誰にでも自明でしょう。

 

 

 

…………………………

 法制定前後に厚生労働省の社会保障審議会障害者部会会長として、この法律制定の推進力として中心的役割を果たされた、京極高宣(きょうごく たかのぶ)(元社会事業大学学長)先生は、2008年12月5日付、9日付の「厚生福祉」という雑誌において、

「 『受益者負担』という用語はもともと財政に関する法律上の概念であって、『開発利益を開発主体へ吸収、還元するための特別課徴金』等の意味で使われていた。…それは道路の開通によって、その周辺の地主等に土地価格の上昇等の特別利益が生じることから、社会的均衡を期すためにその受益者たる地主に開発費用の全額または一部を強制的に負担させるというものである。」(1984年刊「市民参加の福祉計画」)と説明されています。

 噛み砕いていえば、「一部の人が特別に利益を得て得をするのは不公平、ずるいから、その特別に儲けた利益をみんなに吐き出しなさい」という考えが「受益者負担」ということになると思われます。

 しかし、京極先生は「昭和40年代後半から、保健、医療、福祉の分野での利用者の負担を強化するためのテクニカルタームとして国が受益者負担という用語を強調してきた事実」を認めながら、一転「私が調べたところでは、これは外国では使われていない概念である。」として、例えば外国でよく使われるユーザーズチャージは利用者負担と訳した方がいいものであり、「受益者」という概念は必ずしも英語にはなじまない。…私はユーザー(利用者)という言葉を用いて、「利用者負担」という中立的な考え方に整理した。それが今日では一般的に普及している。…と説明されています。

 そして、…あたかも国が障害者を受益者とみて、その便益に応じた応益負担の原理を障害者自立支援法に導入したと決め付けることはいささか短絡的であろう。…

 と記載してます。

 さらには

 …厚生労働省の説明の一部に、障害者自立支援法の利用者負担があたかも応益負担であるかのごとく、やや軽率な発言が在ったのも議論の混乱を招いたかもしれない。

 と書いています。

 

 つまり、京極先生は、障害者自立支援法の負担方法は最初から応能負担だったのであり、あたかも応益負担のごとく軽率な発言をした厚生労働省の一部の人間がいたことが混乱の原因であったという趣旨の御主張を展開されています。

 

 そこで厚生労働省の現在のHPを見てみます。

 平成16年10月12日、厚生労働省障害保健福祉部が、第18回社会保障審議会障害者部会に正式に提出した、障害者自立支援法の原型となる、平成16年10月12日付け今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」には次の記載があります。

 もっとも、「会議終了後に資料に誤りがあることが判明したため、ホームページに掲載された資料は訂正しました。」との記載があるため、何かしらの修正が入っている可能性はあります。

 ……………

見直しの具体的な内容

1 福祉サービスに係る応益的な負担の導入

に基づきサービス量を決定する仕組みであること、またサービスの利用に関する公平を図る観点から、サービスの量に応じて負担が変わる応益的な負担を導入し、利用額に応じ、利用者がサービス事業者に支払うものとする。

 ……………

 

そして、平成16年10月12日付の議事録を見てみます。

 ……………

○村木企画課長
 それではまず私から改革の全体像を簡単にお話したいと思います。
 お手元の資料2「今後の障害保健福祉施策について(改革の
 グランドデザイン案)

【概要】」というものをご覧いただきたいと思います。

 …

次の8ページをご覧ください。費用負担の仕組みでございます。
 絵がかいてございますが、障害者福祉にかかる費用をみんなでしっかりと支える仕組みを
構築をしたいというふうに考えております。
具体的には、ご利用されるご本人の利用者負担について
 これまで応能負担の仕組みをとっておりましたが、
 これからは使ったサービス量に応じて負担をする
 
 応益負担に制度を
 変えたいというふうに考えております。

 そのことによりまして、当然に扶養義務者負担は廃止をされるということでございます。また、応益負担の制度をとった場合に家計への影響等々が非常に大きいという場合もあります。そういったことを考慮しまして、一定の負担上限を設けたいというふうに考えております。この負担上限につきましては、負担能力の低い方には低い負担上限を設定したいと考えております。またさらに、これによっても利用に係る負担をすることが難しいというケースにつきましては、なんらかの配慮措置を講ずることも検討してみたいと考えております。

 ……………
 そして、京極先生が司会をされている平成16年10月25日(金)10:00
~12:30に実施された第19回の議事録を見てみます。
 北川企画官という厚生労働省の官吏が制度説明として
 「利用者負担の問題についても応益的な負担とか、
…こういう形で提案させていただいているというのが我々の考え方です。
と説明しています。
 これに対して、福島智委員から即座に
「応益負担といった場合、応益の益、利益というのは何なのか。」
という指摘が出ています。
 これらの点に関して、京極部会長からは次の発言です。
 
 京極部会長
なお、利用者負担につきましては、私は福祉財政学を
 
 やっているので、 社会福祉サービスにおける利用者負担というのは、応益負担にしても、全額市場ベースのコストを負担しているわけで はなくてその一部をどういう考え方で負担させるかということであって、
福島委員の言うように全部負担させているわけではなくて、
その一部を能力に応じて負担させる場合と、
実際に使った分に対して介護保険のように
 
その一割を負担するという2つになっていて、
負担については必ずしも、財政的に金がないから
利用者に負担させるということではなくて、モラルハザードを防いだり、あるいは、若干の負担をしたほうが使いやすいという利用者の気持ちを忖度したり、いろんな機能があるわけで、そういうことを総合的に考えて、
 例えば、介護保険の場合は応益負担にしたわけで、
 それまでは措置制度の下でしたので応能負担だったということで、

 所得の低い方はたくさん使ってもモラルハザードがないと
いうことだったので、それでいいのか。

 逆に、所得の高い人は応能負担で多額納税者でありながら
たくさんの負担をしている。 そういう問題をクリアしたわけで
、今後どうするか。
 障害施策の将来展望との関係、そして、義務的経費化の問題でも、

 果たして青天井を、どういうところで水準をつくってやれるか
というようなことも
 次回以降詰めて議論したいと思いますので、

これぐらいにしたいと思います
。 
 部会長として、「利用者負担」を福祉財政学上専門的に
 
  研究した学者として、
 
「厚生労働省の説明は間違っている。
 
  これを応益負担と説明するのは間違いで、
 応能負担である。」との指摘は私には読み取れません。


それを4年以上経ってから、
「障害者自立支援法の利用者負担は受益者負担でもなければ、応益負担でもない。あたかも応益負担のごとく軽率に発言した厚生労働省の一部の説明が混乱を招いただけだ。」

 「国が障害者自立支援法の利用者を受益者と考えたとか、応益負担を導入したと決めるつけるのはいささか短絡的だ」というご趣旨の主張を展開される。

 ちなみに、この京極先生の御論稿の中には「障害者が一斉提訴」と題する私たちのこの訴訟の動きがコラムで説明されています。京極先生が私たちの訴訟を意識して御主張を展開されていることは明らかです。

 みなさんはどう思われますか?



 話しが飛んだかもしれませんが、みなさんとともに、障害者自立支援法、応益負担の問題を改めて徹底的に検証していきたいと思います。

 未来を信じて進んで行きましょう。

 

  藤岡毅

  
 ……………………………………………………………………………
 
 
第1号 2009年1月22日

 裁判はじまる!

 

本日2009年1月22日午前10時30分、滋賀県の大津地方裁判所にて第1回口頭弁論期日が行なわれ、全国で行なわれる予定の障害者自立支援法応益負担違憲訴訟の火ぶたが切って落とされました。

 裁判員制度(刑事裁判において、重大な事件の判決の内容を市民が判断する制度)用に作られた大きな法廷の傍聴席は記者席含め満席(傍聴券交付)。

 国、市町村側の被告席には法務局に所属する訟務官(しょうむかん)、厚生労働省の役人、市町村の障害者福祉担当者などが座りました。

 原告側席には原告のみなさん、補佐人(成年後見の保佐人ではありません。民事訴訟法第60条第1項「当事者又は訴訟代理人は裁判所の許可を得て、補佐人とともに出頭できる。」に基づく補佐人)としてのご家族、滋賀弁護団、竹下義樹全国弁護団団長、各地から応援に駆けつけた全国の弁護団員が座りました。

 弁論期日の詳しい内容は滋賀弁護団からの報告をご覧下さい。

 特に印象に残った点を挙げれば、原告2名のお母様の意見陳述です。

 子が生まれてから今に至る歴史と障害者自立支援法の与える影響を物静かに語る姿には胸を打つものがありました。

 裁判官の心に届け!

 

 この裁判は障害者自立支援法が導入した応益負担の過ちを廃絶することを求めてます。

 たまたま裁判員制度に触れたので、裁判員制度で考えてみます。

 裁判員に視覚障害者が参加するとします。ほかの裁判員に配布される印刷された裁判記録を読むためには点訳文書が必要です。では、裁判所は点訳を必要とする視覚障害裁判員には点訳サービス利用料の負担を義務付けるのでしょうか。あるいは、聴覚障害裁判員には手話通訳サービス利用料の負担を義務付けるのでしょうか。車いすを利用する障害者にはスロープ利用料の負担を?

 おかしいですよね。応益負担制度とはこれと同じです。

 障害者福祉施策とは機能障害から派生する社会的不利益を解消・是正するための諸施策です。それがノーマライゼーションの理念として、国際的に共通理解されている障害者福祉の目的です。

 つまり、障害者自立支援法という障害者福祉施策の基本的な法規のなかに応益負担が存在していることを許すということは今の例の場合にも、「点訳サービスを利用するのはその視覚障害者自身の責任なんだから点訳利用料を負担するのは当たり前」という理屈を認めることになります。

 むずかしいことはともかく、このような理屈を認めてしまえば、障害者差別は永遠に無くならないと感じるのが現在到達している一般的な人権感覚なのではないでしょうか。

 この理屈を認めてしまえば、「障害者が働きたいならばスロープ設置費用を負担することを条件とします」、「ジョブコーチの給与の一部を負担することを雇用条件とします」ということを何ら問題ないと是認する社会にになります。

 言い換えると、応益負担制度がこの国の法規にある以上、障害者差別に対して、それは差別じゃないよという法的根拠を与えることを意味します。

 応益負担制度がわが国の法規にある以上、日本は永遠に障害者権利条約は批准できないし、障害者差別撤廃のための入り口に入ることが出来ないのです。

 

 本当?

 被告国らの平成21年1月22日付答弁書29頁1行目には次の記載があります。

 「なお、日本国は『障害のある人の権利に関する条約』を批准していない。」

 これは、原告が障害者権利条約に訴状にて言及したことへの国の反応です。

 ここに国の本音が図らずも顕れていると見るのは早計でしょうか。

 条約を批准しなければ障害者に対する合理的配慮義務違反、障害者差別違反は許されるというのでしょうか。

 障害者権利条約の外務省仮訳は次のとおり。

 「第4条 一般的義務

1 締約国は、障害を理由とするいかなる差別もなしに、すべての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進することを約束する。このため、締約国は、次のことを約束する。

 (a) この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置をとること。

 (b) 障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること。

 (c) すべての政策及び計画において障害者の人権の保護及び促進を考慮に入れること。

 (d) この条約と両立しないいかなる行為又は慣行も差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの条約に従って行動することを確保すること。」

 

 「批准さえしなければ障害者権利条約など関係ない」と国は考えているのでしょうか。

 しかし、国は既に障害者権利条約に署名しています。

 そして、日本は「条約法に関するウィーン条約(条約法条約)」に批准しています。

 同条約の第18条は「条約の効力発生前に条約の趣旨及び目的を失わせてはならない義務」を規定しています。

 「いずれの国も、次の場合には、それぞれに定める期間、条約の趣旨及び目的を失わせることとなるような行為を行わないようにする義務がある。

(a) 批准、受諾若しくは承認を条件として条約に署名し又は条約を構成する文書を交換した場合には、その署名又は交換の時から条約の当事国とならない意図を明らかにする時までの間」

 つまり、2007年9月28日、日本は障害者権利条約に署名した以上、条約の趣旨、目的に反する行為を行えばそれは条約違反として違法となるということです。

 この署名時点で既に障害者自立支援法の応益負担制度は存在していました。

 ということは、私たちの立場から言えば、この署名の瞬間から障害者自立支援法は、「条約法に関するウィーン条約」第18条違反であり、同法は条約違反として無効となるものなのです。

 もちろん以上のようなことも当然私たち弁護団はこの裁判で主張・立証していきます。

 とにかく、応益負担制度が存在していることはわが国の障害者福祉制度に致命的な禍根を残すことであって、絶対に許されないことなのです。

 この点、「お金を払うことで権利性が高まる」などと主張して応益負担を擁護する意見もありますが、はっきりと誤りです。

 ここで対象となっているのは、障害者にとって、障害に起因する社会的不利益を是正するための必要な公的支援に関する公的権利であって、憲法の保障する生存権、平等権、幸福追求権に基づくものです。

 その権利がいくら支払ったかで権利の強弱が連動するのですか?

 お金のない人には支援のための権利が弱くなるのですか。

 生活保護を受ける権利の保障請求を求める人はお金がない以上、その公的権利は薄弱なものなのですか。大金持ちになってから強い権利に基づいて生活保護受給請求権を行使すればいいのでしょうか。もうお分かりでしょう。

 国は「決め細やかな低所得者対策を講じているから問題ない」と必ず弁明してきます。

 しかし、法施行1年目の2006年に発表された「特別対策」も、翌年発表された「緊急措置」も、全国の障害者の悲痛な叫びに押されて、国はその対策をせざるを得ない状況に追い詰められたに過ぎません。

 このことは、法の規定する「利用料原則1割負担」という法の仕組み自体に根本的な過ちがあることを雄弁に証明しています。

 小手先の継ぎ接ぎの小細工を重ねたところで、根本の禍根を断たなければ、本質的な解決にはならないのです。

 

 この障害者自立支援法訴訟は、障害のあるなしに関わらず誰でも安心して住める社会をめざす裁判です。 

 障害者を排除する社会はもろく弱い社会です。

 100年、200年後、私たちの子孫に恥ずかしくないような社会を築くため、弱いものに冷たい社会からおさらばしましょう。

 人にやさしい社会をめざして、さあ、障害者自立支援法訴訟が始まった!

 楽しみです。

      障害者自立支援法訴訟 全国弁護団 事務局長弁護士藤岡毅
 
 
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2011/12/06 22:04
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2011/12/21 4:44
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2009/07/14 19:06
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