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2012年2月27日~3月6日 社説

2012/03/08 3:28 に 東京弁護団 が投稿   [ 2012/03/08 23:32 に更新しました ]

神戸新聞 2012年2月27日 社説

障害者支援法/到底納得できない内容だ

 厚生労働省が今国会に提出する障害者自立支援法改正案の概要がまとまった。

だが、支援法の廃止と新たな法律の制定は、2009年衆院選での民主党

の政権公約だ。支援法をめぐる違憲訴訟で原告と国が和解時に交わした

合意文書にも、それが盛り込まれている。部分的な改正で済ますのは

約束違反である。

無責任と言うしかない。

 現行法は2006年4月に施行された。身体、知的、精神の障害ごとに分かれていた福祉サービスを一元化し、地域での自立や就労を支援する。その理念、方向性は評価できた。

 大きな問題は、受けるサービス量に応じて原則1割を自己負担とする「応益負担」としたことだ。そのため、より多くのサービスが必要な重度の人ほど負担が重くなり、神戸など全国14地裁で障害者らが違憲訴訟を起こした。

 和解ではその点に触れ、混乱を起こしたことを反省し、13年8月までに新制度を実施するとした。そのことを国は忘れてはならない。

 新法の制定に向け、障害者やその家族が委員の過半数を占める「障がい者制度改革推進会議」が発足した。さらに部会で55人のメンバーが約1年半議論し、昨年8月に骨格となる提言をまとめた。

 ところが、厚労省の改正案に反映されたのは、法律名の変更と理念や目的の規定、サービスの対象者に難病患者を追加することなど、一部にとどまる。

 一方で、支援の必要度が実態に合っていないとの指摘がある障害程度区分については、施行5年後をめどに見直すと先延ばしした。就労支援の在り方についても同時期に再検討するという。

これでは、障害者団体や元原告らから「和解時の基本合意と相いれない」などと批判や抗議が相次ぐのも当然だ。

 提言は当事者らが何度も議論を重ねてまとめた。全てに沿う新法は財源などから難しいとしても、もっと反映させる努力が要る。無理な項目についてはその理由を丁寧に説明するべきだ。

 厚労省は、支援法を廃止すると全ての事業者を指定し直す必要があり、自治体などの負担が増す上、新法制定には野党の協力が得られないとして、改正手続きで対応したい考えだ。改正案は支援法の「事実上の廃止」ともいう。

 名前を変え、共生社会の実現や社会的障壁の除去を理念に掲げたところで、肝心の中身がほぼ同じでは到底納得できない。提言にもう一度立ち返り、中身の再考を求めたい。

 


中国新聞 社説 201235

障害者支援の行方 公約違反 繰り返すのか

政府は今月中旬にも障害者自立支援法の改正案を閣議決定し今国会に提出するという。

 民主党は2009年総選挙のマニフェスト(政権公約)で、自立支援法の廃止を掲げていた。政権を担ってからも一貫して新法の制定をうたってきた。

 それをいまさら事実上の法改正でとどめるとすれば、公約違反との批判は免れないだろう。確かに改正案は、自立支援法に抜け落ちていた「共生社会の実現」「社会的障壁の除去」を立法の理念として明記するという。名称も「障害者生活総合支援法」へと変更する。

 とはいえ、その中身は法改正にほかならない。単なる看板の掛け替えであり、これでは「正心誠意」という野田政権のモットーも色あせてしまう。またもや政治の「軽さ」が、国民に不信感を与えるのだろうか。

06年に施行された障害者自立支援法の特徴は、サービス利用料の1割を支払う「応益負担」や、サービスの種類や量を決める目安となる障害程度区分を導入した点だ。

 だが、当初から現場は混乱した。経済的な負担からサービスの利用を控える人が出てきたのだ。障害程度区分によって従来の支援が受けられなくなったケースも相次いだ。

 憲法25条が保障する生存権に反するとし、障害者たちが国を相手に起こした違憲訴訟は全国14地裁に広がった。そこでも国は原告側に、自立支援法の廃止と新法制定を約束して和解した経緯がある。 これをほごにしてまで野田政権が自立支援法の枠組みの維持にこだわるのは、事務的な理由もあるようだ。 もし廃止した場合、すべてのサービス事業者を指定し直す必要があり、自治体や事業者の負担が増すと政府は説明する。 さらに自民、公明両党の協力を取り付けたい与党側の思惑も働いているとみられる。自立支援法は両党の連立政権時代の産物だからだ。どちらを向いて政策を練っているのだろう。

改正案をまとめる過程にも不誠実さを感じる。障害者たちが制度改革のためにまとめた「骨格提言」の扱いである。 政府は内閣府の諮問機関として推進会議を設け、障害者や関係団体代表らを部会メンバーに招いた。20回近くの会合を重ね、意見を集約してまとめたのが60項目に及ぶ提言だった。 ところが、改正案に取り入れられたものはごく一部にとどまる。障害者から「意見が反映されていない」と反発や失望の声が上がるのは無理もなかろう。 提言にあった「利用者負担の原則無償化」は、過去の法改正で今年4月から所得に応じた「応能負担」となるため、今回は見直さない方針だ。 その点は分からなくもないが、障害程度区分や就労支援の見直しについても先送りする理由は理解できない。中には財源的に実行が難しい提案もあるだろう。だが軽率な取り扱いでは済まされまい。今回の法改正が、サービス給付の地域格差解消や福祉従事者の処遇改善に向けた抜本的な解決につながるとも思えない。

 政府は閣議決定を遅らせてでも、骨格提言をもう一度丁寧に洗い直してもらいたい。法案に反映できない項目は、その理由を丁寧に説明すべきだ。

 

 

高知新聞 社説 2012年3月5日

【自立支援法】国は廃止の約束を守れ

厚生労働省が今国会に提出する方針の障害者自立支援法改正案に対し、障害者団体などが反発を強めている。
 民主党は2009年衆院選マニフェスト(政権公約)に支援法廃止を明記していた。にもかかわらず、一部改正で決着させようとする姿勢に批判が起こるのは当然だろう。
支援法違憲訴訟の原告団が国と和解した基本合意書にも、廃止と新法制定は盛り込まれている。司法の場で交わされた国の約束であるだけに、政府は廃止の筋を通すべきだ。
 06年施行の障害者自立支援法は、福祉サービスの量に応じて原則1割を自己負担する「応益負担」を導入した。その結果、障害が重い人ほど負担が増え、授産施設では負担が工賃を上回る逆転現象も生じた。
 これに反発した障害者らが各地で国を提訴。政権交代後、支援法廃止と新法制定を条件に和解した。10年の支援法改正により、今年4月からは支払い能力に応じた「応能負担」にもなる。
 障害者をめぐる状況が一定改善されつつある一方、ここにきて国が支援法廃止を渋るのはなぜか。
 厚労省は廃止すればサービス事業所の指定し直しなどで、自治体の負担が増すことを理由に挙げる。だが、それは経過措置や見なし規定など工夫次第で減らすことが可能ではないか。
 何より懸念されるのは障害者らの国に対する不信が深まることだ。
 政府は新法制定に向けて、障害者自身が委員として参加した改革会議の部会を設置した。同部会は1年以上の論議を経て、「高所得者を除き障害福祉サービスの原則無料化」など多くの提言をまとめた。ところが、改正案には一部しか反映されていない。
 むろん、財源との兼ね合いもあり、すべての提言を実現するのが難しいのも分かる。ただ、支援法廃止がほごにされる上、要望もほとんど聞き入れられないとなれば、障害者らが裏切られたと憤るのも無理はない。
 なぜこうした改正案になったのか、国は説明責任を果たすべきだ。数々の公約を後退させてきた民主党政権にはなおさら、その義務がある。
 一方、改正案では難病患者を法律の対象としたことを評価する声もある。こうした成果を一つずつ積み上げていくことが大切だ。国と障害者との信頼関係が崩れてしまっては、「共生社会の実現」はおぼつかない。

 

 

 

愛媛新聞 社説 2012年3月6日

障害者自立支援法 理念も約束もほごにした政官

 政も官も、国民との約束を平気でほごにして恥じる様子もない不誠実な政治の失敗例が、また一つ増える。
 民主党は障害者自立支援法の改正案を了承、今国会への法案提出を目指す。新たに難病患者も対象に加えたが、懸案の「障害程度区分の廃止」「サービスの原則無料化」などは盛り込まれなかった。
 自立支援法は「改正」ではなく「廃止」して新法を制定する
。2009年の同党の衆院選マニフェスト(政権公約)にはそう明記されたが、またも「言うだけ」で実現せず、見送られることになる。
しかし、廃止は単に民主党の公約にとどまらず、司法の場での公の「約束」だったことを忘れてはならない。
 06年施行の障害者自立支援法は、福祉サービスの利用に応じて原則1割を自己負担する「応益負担」とした。障害が重い人ほど支払いが増えるため、全国の障害者が強く反発。提訴が相次いだが、原告と国は10年、合意文書に「廃止と新法制定」を盛り込み、和解に至った経緯がある。
 いわば「廃止」は、和解の前提条件。2年の時間を空費したあげく、約束を軽々に覆すことは原告への裏切りに等しく、決して許されない。

 一方、厚生労働省がまとめた改正案は、当事者が求めていた新法から大きく後退。名称を「障害者総合支援法」と改め「表紙」を替えることなどで自立支援法の「事実上の廃止」と言い張るが、全くの詭弁(きべん)と断ぜざるを得ない。
何より看過できないのは、政府の「障がい者制度改革推進会議」総合福祉部会が、昨年8月にまとめた骨格提言の内容を、ほぼ無視した点。
 同部会は障害者団体代表ら55人が結集。従来の恩恵的な「障害の医学モデル」から、誰もが障害があっても社会参加できるよう地域支援体制を充実させるという「障害の社会モデル」への転換を促す60項目もの提言をまとめた。にもかかわらず、改正案に不十分でも取り入れられたのはわずか3項目。同会議の東俊裕担当室長は松山市の講演で「『これはなんだ』と怒りの声が渦巻いた」と訴えた。すべての反映は難しいとしても、当事者の声を形だけ聞いて取り入れないという厚労省の姿勢は言語道断である。
新法では現場が混乱する、と言い訳するが、小手先の改定を繰り返す国の姿勢こそ混乱の元凶。また負担は、既に軽減措置がとられ、一部改正で4月から支払い能力に応じた応能負担になるというが、「原則無料」とは理念において全く別物。障害程度区分も「3年をめどに見直す」と、ただ先送りしたにすぎない 一体、誰のための支援法なのか。そのことを真摯(しんし)に問い直し、一刻も早く新法制定に取り組んでもらいたい。

 

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東京弁護団,
2012/03/08 3:28
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