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弁護団事務局通信 2012年2月24日

2012/02/23 23:49 に 東京弁護団 が投稿   [ 2012/03/08 23:33 に更新しました ]

全国弁護団事務局 通信  2012年2月24日

 

 今の動きに対して、各社の報道があります。

 

【東京新聞 社説】2012年2月16日

 

障害者の新法 現場の声を忘れるな

  

  民主党政権は公約の「障害者自立支援法の廃止」を反故(ほご)にするのか。障害者が十分な支援を得られない欠陥を残したまま厚生労働省は法律を温存する構えだ。なぜ変節したのか、説明責任を果たせ。

 

 二〇〇六年に施行された自立支援法は身体、知的、精神の障害ごとにばらばらだった福祉サービスを一元化し、効率化を図った。だが、出足から評判が悪かった。

 

 サービス利用料の原則一割を支払うルールを取り入れたため、収入の低い人や障害の重い人ほど負担が急増した。授産施設では工賃が負担を下回るという逆転現象さえ生じ、サービスの利用を我慢する人が相次いだ。

 

 人権侵害だとして全国各地で違憲訴訟が一斉に起きた。この国の障害福祉行政は一体どこを向いて仕事をしているのだろうか。

 

 民主党政権もそんな自立支援法を問題視したからこそ原告団と和解し、法の廃止と新法の制定を約束したのではなかったのか。そして現場を熟知する障害者や家族らの知恵を借りようと、新法の枠組みづくりを委ねたはずだ。

 

 その現場の声は昨年八月に骨格提言として集約された。閣議決定通り今国会に向けて法案化されると信じたのに、新法案と称して厚労省が示したのは現行法の仕組みを維持した案にすぎなかった。

 

 提言内容はことごとくないがしろにされた。とりわけ問題なのは障害程度区分と呼ばれるシステムが残ることだろう。障害が軽いか重いかで障害者を六つのランクに分ける物差しだ。

 

 心身の機能や能力についてコンピューターを使ったり、専門家が話し合ったりして調べる。そして本人のいないところでそのランク、つまりサービス内容を一方的に決めてしまうのである。

 

 全国一律の客観的な物差しを使い、自治体によってサービスにばらつきが出ないようにするのが建前だ。裏を返せば、障害者がどんな暮らしを望み、どんな支援を求めたいのかという肝心要のニーズには応えないシステムだ。

 

 食事や排泄(はいせつ)、移動、コミュニケーションといった身の回りの支援は、障害者にとって命綱である。障害者が健常者と同じように社会生活を送るための必要最小限の手段だ。売り買いを目的とした商品ではない。

 

 いくら「障害者と健常者の共生社会の実現」と理念を掲げ、法律の名前を変えても、中身がそのままなら世界の六割が加盟する障害者権利条約の批准も危うい。

 

 

【神奈川新聞 社説】 2012年2月16日

 

提言の無視は許されぬ

 現行の障害者自立支援法を廃止し、2013年8月までに施行する目標の「障害者総合福祉法」(仮称)について、内閣府の諮問機関「障がい者制度改革推進会議」の総合福祉部会に厚生労働省案が示された。

 

 法案の方向性を示す概要だが、昨夏に同部会がまとめた骨格提言をほとんど無視した内容ともいえよう。部会の委員や障害者団体は強く反発しており、徹底した再検討が必要だ。

 

 厚労省案は、わずか4ページの簡略な中身だ。例えばサービス支給について、骨格提言は障害程度区分に代わる新たな支給決定の仕組みを求めた。これに対し、同省案は「法の施行後5年を目途に、障害程度区分の在り方について検討を行い、必要な措置を講じることとする規定を設ける」とした。現行の障害程度区分を維持したまま、部分修正のみ検討するという姿勢だ。

 

 新法制定ではなく、障害者自立支援法の一部改正にとどめようとする同省の姿勢が表れている。

 

 佐藤久夫部会長の整理では、骨格提言の内容60項目のうち、同省案で全く触れられていない事項が48項目にも上った。検討されているが、その内容が不明確なのは9項目。不十分ながら骨格提言を取り入れている事項は3項目にすぎなかった。

 

 委員からは「骨格提言を無視した内容であり、到底認めることはできない」「(国と障害者自立支援法訴訟原告との間で結ばれた)基本合意に反する。国は詐欺を働くのか」などの激しい反発の声が上がったという。

 

 骨格提言は、障害者、関係団体の代表らが一堂に会し、18回もの会合を重ねた末に一定の共通見解に達した歴史的な文書だ。

 

 障害者の地位を保護の客体から権利の主体へと転換し、障害者権利条約の精神を実現させるものだ。提言に基づく新法は、障害者福祉を大きく前進させるものとして期待されていた。

 

 厳しい財政状況下で、具体的なサービス支給には柔軟な対応もやむを得ないだろう。しかし、骨格提言が示した障害者の権利の在り方、制度の骨組みの具体化を法案で目指さなければ、部会を設置した意味がなくなる。

 

 障害者らは裏切られた思いだろう。深刻な不信感、政治・行政との亀裂は、今後に禍根を残す。政府与党は骨格提言に基づく制度づくり、工程表作成に真剣に取り組むべきだ。

 

 

 

 【山陽新聞 社説】 2012年2月20日

 

自立支援法 見直しに政治は責任持て

 

 厚生労働省が障害者自立支援法に代わり2013年4月の施行を目指すとした新法に対し、障害者らから批判が巻き起こっている。廃止するとしていた現行法の一部修正にとどめ、抜本的な見直しを先送りする内容だからだ。

 自立支援法は06年に施行された。福祉サービスを利用するごとに料金がかかる「応益負担」や、障害の状態に応じてサービス内容や支給量が決まる「障害程度区分」が導入され、障害者が生活に必要なサービスを受けられない事態が起きた。

 憲法が保障する生存権に反するなどとして岡山、広島など全国14地裁で違憲訴訟が起こされ、国は新たな法律を制定することを約束して和解した。これを受け政府の「障がい者制度改革推進会議」の部会が昨年8月に新法の骨格提言をまとめた。

 しかし、今回の厚労省案はこの提言をほとんど反映していない。福祉サービスの原則無料化は見送り、障害程度区分は施行後5年をめどに検討するとした。具体的に盛り込んだのは難病を対象に含めることと一部サービスの一元化くらいである。

 応益負担は既に所得に応じた軽減措置がとられているが、そもそも生活に不可欠な福祉サービスに自己負担を課すことには問題が多い。介護保険の要介護認定をモデルとした障害程度区分は障害者の生活やニーズを反映していないのが実態だ。厚労省案からは、こうした問題点に向き合う姿勢が見えない。

 厚労省は現行法を廃止すれば、すべてのサービス事業者を指定し直す必要があり、自治体や事業者の負担が増すとしている。だが、実際には財源確保のハードルが高いのだろう。

 確かに提言の内容は実現性が危ぶまれるものも少なくない。ただ、障害者を中心とした55人もの推進会議の部会メンバーが1年半に及ぶ議論を経てまとめたものだ。ゼロ回答に近い厚労省案はあまりに不誠実と言わざるを得ない。

 現行法廃止の約束を事実上反故(ほご)にした民主党政権の責任は大きい。違憲訴訟の元原告らが「基本合意は政治情勢の変動にかかわらず国家として順守すべきだ」と抗議したのは当然だ。

 自立支援法はもともと介護保険との統合を視野に成立を急いだ経緯があり、障害者福祉の実態にそぐわない部分が多い。政府は「共生社会の実現」という新法の理念を言葉だけで終わらせず、財源も含めてしっかり議論し、制度の再構築を進めるべきだろう。

 

 

 

 

【西日本新聞】 2012年2月22日

 

自立支援法 厚労省改正案再検討を

 

障害者自立支援法を廃止して来年8月までに施行する予定の「障害者総合福祉法(仮称)」の厚生労働省案について、障害者や福祉関係者の間で批判が高まっている。自立支援法の全面見直しを約束した民主党の2009年衆院選マニフェスト(政権公約)などに反するというのが大きな理由。九州でも再検討を求める動きが相次ぎ、関係者は「厚労省案を認めれば、障害者も参加して検討してきたこれまでの努力が無駄になる」と反発を強めている。

 

 自立支援法については、障害者が受ける福祉サービスに原則1割の自己負担を求めたことを問う違憲訴訟が全国各地で行われ、国は10年1月に和解。自立支援法訴訟団と「自立支援法廃止と新法制定」を基本合意した。

 

 国は障がい者制度改革推進会議を設けて同年4月、障害当事者をメンバーにした総合福祉部会で新法の検討をスタート。18回の会議を経て昨年8月、骨格提言を厚労省に提出した。

 

 だが、今月8日に厚労省が公表した法案には、骨格提言60項目のうち何らかの形で内容に触れたのはわずか3項目。障害者の範囲については、難病の一部を含むとしたものの、提言した障害のあるすべての人とはしていない。サービス支給についても、現在の障害程度区分に代わる新たな支給決定の仕組みが求められたのに対して「法の施行後5年をめどに、障害程度区分のあり方について検討を行い」などと、現行制度を前提として先送りする内容になっている。

 

 福岡市では21日、障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす福岡の会や、小規模作業所・事業所などでつくる「きょうされん」(旧・共同作業所全国連絡会)福岡県支部などが、同市の衆院議員事務所を訪ね、厚労省案の再検討を要望。「違憲訴訟での基本合意がほごにされる」などと訴えた。障害者の生活と権利を守る同県連絡協議会の石松周会長は「障害当事者も一緒に論議をしてまとめた骨格提言を踏まえ、政府案をまとめてほしい」と話した。

 

 長崎県でも、障害者団体代表らが国会議員5人に面会して党内論議を要請済み。NPO法人・ロバの会(同県諫早市)の畑山裕詩理事長は「厚労省案は、自立支援法の一部改正。名前だけ変えて中身を伴うものではない」と批判している。

 

 

 2012年2月22日 東京新聞

 次のように東京新聞が報じています。ファイル参照。
 この日は長妻昭氏が座長の民主党厚生労働部門会議に厚生労働案が提出された日です。
 
 
 

 

【信濃毎日新聞 社説 】 2012年2月23日

 

障害者支援法 廃止と新法制定が筋だ

 

 厚生労働省が障害者自立支援法の改正案を今国会に提出する。内容を見直すほか、法律の名称も変える。

 支援法については、「廃止」が民主党政権の約束だったはず。2009年総選挙の政権公約であり、支援法違憲訴訟で原告と和解したときの合意文書にも盛り込まれている。

 厚労省は改正案を「事実上の廃止」とするが、苦しい言い訳だ。現行法の枠組みを出ていない。

 支援法は廃止し、障害者の権利を保障する新たな法律をつくる。これは司法の場で取り交わされた約束でもある。政府は守らなくてはいけない。

 現行法は、自公政権下の06年に施行された。身体、知的、精神の障害ごとに分かれていた福祉サービスを一元化し、障害者の自立と就労を支援する。方向性はいいが評判はさんざんである。

 当初はサービス量に応じて利用者負担を求める「応益負担」としたため、障害の重い人ほど支払いが増えた。「自立を妨げる」との反発が各地で広がり、障害者らが国を訴える違憲訴訟が相次いだ。

 政権交代後、当時の長妻昭厚労相が廃止を明言。各地の違憲訴訟は和解となった。

 今回、「改正」にとどめた厚労省の言い分はこうだ。支援法を廃止すると、自治体や事業者の負担が増えるうえ、新法制定には野党の協力が得られない。

 改正案には、新たな理念に「共生社会の実現」と「社会的障壁の除去」を掲げる。現行法にある「自己責任」の色合いも消す。これで理解してもらえないか―と。

 障害者団体から批判が続出している。改正案は、基本的には現行制度を存続させるものという。

 たとえば、障害福祉サービスを利用する前提となる「障害程度区分」。精神、知的障害者では支援の必要度が低く判定されるなどの問題がある。本人のニーズの尊重も課題になっている。改正案では、施行5年後をめどとする見直しにとどまる。

 政権交代で芽生えた利用者本位の試みが、生かされていないのも理解しがたい。

 民主党政権のもとで新設された障害者制度改革の推進会議には、障害のある人が大勢加わった。当事者らによる部会が議論を重ね、新たなサービス支給決定の仕組みやコミュニケーションの支援など新法の骨格となる提言を、昨年夏にまとめている。これが改正案にはほとんど反映されていない。

 厚労省はもう一度、部会の提言まで立ち戻ってもらいたい。

 

 
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